公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.58解説

 問 題     

社会学の諸理論に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.現象学的社会学とは,20 世紀に確立された現象学の知見・方法・態度を取り入れた社会学を意味する。A.シュッツは,『社会的世界の意味構成』においてM.ヴェーバーの理解社会学の問題点を指摘し,理解社会学に哲学的基礎を与えた。

2.社会構築主義とは,社会的な現象や出来事は客観的に構築されており,その実在性は疑い得ないと考える立場であり,自然科学や実証主義とも親和性が高いとされている。

3.エスノメソドロジーとは,J.ハーバーマスを創始者とする社会学の理論的立場である。エスノメソドロジーでは,一般の人々が日常において秩序を維持するために駆使している様々な方法は研究の対象とされず,自然科学的な立場や手法が重要視されている。

4.T.パーソンズは,象徴的(シンボリック)相互作用論を提唱し,貨幣・権力・影響力・価値コミットメントを,行為のコントロールを可能にする「象徴的に一般化されたメディア」とみなした上で,シンボルを媒介とする相互行為を分析した。

5.E.ゴフマンは,社会構造を分析する方法として,演劇論(ドラマトゥルギー)的分析手法を取り入れた。彼は,社会を舞台としてこの手法を捉え,「全ての行為者はパフォーマーであり,パフォーマーが意識しなければならないオーディエンスなど存在しない」としている。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
現象学的社会学とは、哲学におけるフッサールの現象学的アプローチを社会学に応用する立場です。アルフレッド・シュッツが提唱したとされています。日常的生活社会が対象です。人々の認識や意識を通じて社会的現実が理解されるという観点からのアプローチといえます。(参考 法務 H26no54)。

選択肢 2 ですが
社会構築主義とは「社会問題が、それを問題であると定義する活動により構築されていくものである」という考え方です。「客観的に構築されている」「実在性は疑い得ない」という考え方ではありません。選択肢 2 は誤りです。(参考 法務 H26no54

選択肢 3 ですが
エスノメソドロジーとは、日常生活を構成する方法=エスノメソッド を研究する社会学です。創始者はガーフィンケルです。「J.ハーバーマスを創始者とする」わけではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
象徴的 (シンボリック) 相互作用論とは、H.G.ブルーマーらによって提唱されたものであり、社会を、言葉などのシンボルを媒介とする人間の相互作用過程として見るものです。(H26no59)。「T.パーソンズ」が提唱したわけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ゴフマンとドラマトゥルギーという、人物と用語の対応は妥当です。ドラマツルギーの社会学において、人の行動は、時間・場所およびオーディエンスに依存しているとされます。「パフォーマーが意識しなければならないオーディエンスなど存在しない」わけではありません。正確な知識がなくても、「演劇の演者は、当然観客を意識しているはず」と考えて判断してもよい選択肢と考えられます。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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