問 題
M.ヴェーバーの理論に関する記述として妥当なのはどれか。
1.彼は,社会的事実は個人的事実を構成素材とするが,それを超えた独自の性格を持つ一つのシステムであるとした。「社会的事実は社会的事実によって説明されなければならない」とする彼の立場は,「方法論的集団主義」と呼ばれている。
2.彼は,社会学における研究は,自然科学における研究と同様に主観を一切排除し,研究者はあらゆる社会的価値判断から離れた客観的立場に立って対象を考察しなければならないとする「価値自由」の概念を提唱した。
3.彼は,社会的行為を,目的合理的行為,価値合理的行為,伝統的行為の三つに分類した。そして彼は,人間が様々な欲望に駆られて目的合理的行為がなされた結果,近代の資本主義社会が発展していったとした。
4.彼は,支配の正統性が何によってもたらされているかに注目して,支配を,合法的支配,伝統的支配,カリスマ的支配の三つに分類した。そして彼は,合法的支配の最も純粋な形態が官僚制的支配であるとした。
5.彼は,官僚制組織の機能分析を行った上で,官僚制組織は,規則の遵守を強調するあまり成員の間に「過剰同調」を生じさせ,その結果,手段であったはずの組織への同調が本来の組織目標の達成よりも重視されてしまう「目標の転移」を生み出すことを指摘した。
解 説
選択肢 1 ですが
社会的事実とは、デュルケームにより、社会学の研究対象としてあげられた概念です。具体的には、貨幣制度、法、言語などを指します。「社会的事実をモノのように観察すること」という立場をとりました。(参考 法務 H27no55)。「社会的事実は社会的事実によって説明されなければならない」としたわけではありません。デュルケームの立場と「方法論的集団主義」という用語の対応は妥当です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
「価値自由」は、M.ヴェーバーの提案した方法論です。社会科学において、避けられない「主観による価値判断」と、「事実判断」の峻別を明確に意識することを説きました。「主観を一切排除し」といった主張ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
M.ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」によれば、プロテスタントの世俗内禁欲が、資本主義の精神に適合性を持っていたとされています。(H26no60)。そして、宗教的行為は「価値合理的行為」に分類されます。「目的合理的行為がなされた結果、近代の資本主義が発展していった」としたわけではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
M.ヴェーバーの支配の三分類についての記述です。
選択肢 5 ですが
官僚制組織の機能分析を行い、行き過ぎた官僚制が「目標の転移」の他、「訓練された無能」や「顧客の不満足」といった逆機能に陥ることを指摘したのはマートンです。M.ヴェーバーは、組織と官僚制を初めて体系的に考察しました。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
コメント