公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.43解説

 問 題     

最近の我が国の経済状況に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.日本経済は 2012 年 11 月を底に景気回復基調に転じた。GDP の動向をみると,2014 年度は,名目GDP,GDP デフレーターは前年度比プラスであったが,実質GDP は前年度比マイナスとなった。2015 年度は,名目GDP,実質GDP,GDP デフレーターがそろって前年度比プラスとなった。

2.潜在 GDP 成長率(年度)は,2000 年度以降, 3 〜4 % で横ばいの推移を続けている。これを要因別にみると,労働投入については,景気の緩やかな回復基調の下,高齢者や女性の労働参加が進み,2012 年度から 2015 年度まではプラスの寄与となった。また,全要素生産性については,2012 年度から 2015 年度まで寄与のプラス幅が拡大傾向となっている。

3.賃金の動向については,労働需給が引き締まりつつある中で,我が国全体の賃金所得を表す総雇用者所得(一人当たり賃金に雇用者数を乗じたもの)は,実質でみると 2015 年 7 月から 2016 年 4 月まで 10 か月連続で前年比マイナスとなった。一方,四半期別の労働分配率(季節調整値,全規模,全産業(金融業,保険業を除く。))についてみると,2013 年 1-3 月期から 2016 年 1-3 月期まで,上昇傾向で推移している。

4.財務省「法人企業統計調査」により,企業部門(金融業,保険業を除く。)における動きをみると,経常利益は 2007 年度に 53 兆円程度であったが 2015 年度には 130 兆円程度となり,売上高は 2007 年度に1,350 兆円程度であったが 2015 年度には 1,800 兆円程度となった。一方,設備投資は,2007 年度から 2015 年度までほぼ一貫して減少している。

5.2015 年末の我が国の対外直接投資残高は約 30 兆円であり,そのうち英国向けは約 1.5 % となっている。対外直接投資残高の内訳を業種別にみると,英国では金融・保険業のシェアが低く,5 % 未満となっている。また,2016 年6 月に英国で行われた国民投票で EU からの離脱が支持されたことから,国民投票後の 1 週間で為替レートは対ドルなどで急激な円安方向で推移した。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
日本の GDP についての記述です。GDP デフレーターとは、名目GDPから実質GDPを算出するために用いられる物価指数です。

選択肢 2 ですが
潜在 GDP 成長率は、2000 年度以降、概ね 1% 未満です。「3 〜4 % で横ばいの推移を続けている」わけではありません。ちなみに、労働投入要因について、2012 ~ 2015 年度までプラスになったのは妥当です。その後マイナスになっています。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
総雇用者所得は増加しています。労働分配率は下げ止まりの後、一進一退という状況です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
経常利益は上昇傾向です。とはいえ、10 年も経過しないうちに 53 兆円→130 兆円程度と、2.5 倍も上昇するのは少しおかしいと感じるのではないでしょうか。70~80 兆円程度となっています。一方で、売上高はわずかに上昇傾向といった所です。設備投資も緩やかな上昇傾向です。選択肢 4 は誤りです。 

選択肢 5 ですが
日本の対外直接投資額は約 「10 兆円」です。約 30 兆円は少し多すぎです。 また、EU 離脱支持に伴い、安全資産とされる円に資金が逃避し、「円高」が進行しました。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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