問 題
国家賠償に関するア〜オの記述のうち,判例に照らし,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
ア.国家賠償法第1 条第1 項にいう「公権力の行使」について,公立学校は国又は公共団体に該当せず,公立学校における教師の教育活動は公権力の行使には含まれないため,市立中学校において体育の授業中に教師の注意義務違反により生じた事故は,国家賠償の対象とはならない。
イ.裁判官がした争訟の裁判について,国家賠償法第1 条第1 項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには,上訴等の訴訟法上の救済方法によって是正されるべき瑕疵が存在するだけでなく,当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判をしたなど,裁判官に付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したと認められるような特別の事情が必要である。
ウ.国会議員は,立法に関し,国民全体に対する政治的責任のみならず,個別の国民の権利に対応した関係での法的義務も負っていることから,立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行ったというような特別の事情がなくても,法律の内容が違憲である場合は当該立法が違法となるため,国会議員の立法行為は原則として国家賠償の対象となる。
エ.税務署長が行った所得税の更正は,所得金額を過大に認定していたとしても,直ちに国家賠償法上違法とはならず,税務署長が資料を収集し,これに基づき課税要件事実を認定・判断する上で,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認められるような事情がある場合に限り,違法の評価を受ける。
オ.犯罪の被害者が公訴の提起によって受ける利益は,公訴の提起によって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず,法律上保護された利益ではないから,被害者は,検察官の不起訴処分の違法を理由として,国家賠償法の規定に基づく損害賠償請求をすることはできない。
1.ア,ウ
2.ア,オ
3.イ,エ
4.イ,ウ,オ
5.イ,エ,オ
解 説
記述 ア ですが
通説・判例によれば、公立学校での教育活動について、公権力の行使に含まれるとしています。(広義説。判例は 最判 S62.2.6)。記述 ア は誤りです。
記述 イ は妥当です。
参考 H26no19 ウ
記述 ウ ですが
国会議員の立法行為は、その立法の内容が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合、例外的に国家賠償法第1条第1項の適用上違法の評価を受けます。(H26no19 エ)。「特別の事情がなくても、内容が違憲であれば立法が違法」というわけではありません。記述 ウ は誤りです。
記述 エ は妥当です。
最判 H5.3.11 です。
記述 オ は妥当です。
被害者・告訴人が捜査や公訴提起で受ける反射的利益は、法益でなく、処分の違法を理由に国家賠償請求はできません。
以上より、正解は 5 です。
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