問 題
行政不服審査法における教示に関するア〜エの記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。
ア.行政不服審査法は,補則(第6 章)において,教示についての規定を置いているが,この教示の規定は,同法の規定が適用される場合に限らず,他の法律に基づく不服申立てにも原則として適用される。
イ.審査請求をすることができる処分につき,処分庁が誤って審査請求をすべき行政庁でない行政庁を審査請求をすべき行政庁として教示した場合において,その教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは,その審査請求がされたことのみをもって,初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなされる。
ウ.処分庁が誤って法定の期間よりも長い期間を審査請求期間として教示した場合において,その教示された期間内に審査請求がされたときは,当該審査請求は,法定の審査請求期間内にされたものとみなされる。
エ.建築基準法に基づく壁面線の指定は,特定の街区を対象として行ういわば対物的な処分であり,特定の個人又は団体を名宛人として行うものではないから,当該指定については,行政不服審査法の規定に基づく職権による教示を行う必要はないとするのが判例である。
1.イ
2.ウ
3.エ
4.ア,エ
5.イ,ウ
解 説
記述 ア は妥当です。
行政不服審査法 1 条 2 項により、行政不服審査法は行政不服申立に関する一般法です。
記述 イ ですが
行政不服審査法 22 条 5 項によれば、「審査請求できる処分について、誤って教示された行政庁に審査請求がされた場合、審査請求書等が、審査庁となるべき行政庁に送付されたとき、初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなす」とあります。従って、『教示された(誤った)行政庁に書面で審査請求されたことのみをもって』、初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求されたとみなされるわけではありません。記述 イ は誤りです。
記述 ウ ですが
誤って法定期間よりも長い期間を教示され、法定期間を過ぎているが教示された期間内に審査請求をしたケースを考えます。この場合、「法定の審査請求期間内にされたものとみなされる」のではなく、行政不服審査法 第 18 条ただし書きにおける「正当な理由」に該当すると思われます。記述 ウ は誤りと考えられます。
記述 エ は妥当です。
最判 S61.6.19 です。
以上より、正解は 4 です。
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