公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.6解説

 問 題     

アメリカ行政学に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.W.ウィルソンは,当時の腐敗した政党政治を改革するため,新たな学問的研究としての行政学の必要性を説き,『行政国家』を著した。その後,公務員の任用に資格任用制を導入するペンドルトン法が制定されるなどその研究成果は改革の進展に貢献した。

2.F.グッドナウは,その著書である『政治と行政』において,政治とは国家意思の表現であり,行政とは国家意思の執行であるとした。そして,政治による統制が必要なのは,行政の機能のうち,法律の執行機能についてであると主張した。

3.アメリカ行政学は,政治・行政融合論を軸として19 世紀末に産声をあげた。そして,20 世紀に入ると経営学の影響を受けるようになり,ニューディール期に行政管理論として確立し,政治・行政二分論へと展開した。

4.行政官としてニューディール期の政策形成に参画した経験をもつP.アップルビーは,その論文である「行政の研究」において,現実の政治と行政の関係は,非整合的,非連続的であると主張した。その上で,行政を政治過程の一つであるとする立場を批判した。

5.D.ワルドーは,それまでの行政学を批判し,『政策と行政』を著した。彼は,能率それ自体よりも何のための能率であるのかということを重視する考え方を否定し,能率の客観的側面と規範的側面に注目する二元的能率観に基づく議論を提起した。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ウィルソンは、現代行政学の開祖と呼ばる人です。ペンドルトン法成立を背景として書かれた『行政の研究』で、実務的に政治と行政の分離(政治行政二分論)を唱え、猟官制の抑制と近代的官僚制の再導入を提唱しました。(H27no7)。似ている本の名前ですが、『行政国家』の著者はワルドーです。ウィルソンではありません。

選択肢 2 は妥当です。
グッドナウの『政治と行政』についての記述です。

選択肢 3 ですが
選択肢 1 の解説にもあるように「政治行政二分論」を唱えたウィルソンが現代行政学の開祖であり、アメリカ行政学の開祖でもあります。「政治・行政融合論を軸として」ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
アップルビーは、「行政とは政策決定であり・・・政治過程のひとつ」と述べ、政治・行政融合論を提唱した人です。(H27no7)。「現実の政治と行政の関係は、非整合的、非連続的」と主張したわけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ワルドーの代表的著書は『行政国家』です。『政策と行政』は、アップルビーの著作です。能率についての記述は妥当です。ワルドーの二元的能率論です。ギューリックの行政学に関する「能率=基本的善」という説への批判です。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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