公務員試験 H29年 国家一般職(行政) No.7解説

 問 題     

官僚制と組織に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.古典的組織論において,L.ギューリックらは,部下にとっての上司は一人とする「命令系統の一元化」,管理者が統制する部下の適正規模に関する「統制の範囲」,業務の「同質性による分業」等の原理に基づいて組織を編成することの意義を説いた。

2.科学的管理法は,テイラー・システムとも呼ばれ,組織の公式の目的とは反するような行動規範を持つ集団の形成に着目し,職場におけるインフォーマルな組織に基づく人間関係が作業の能率を左右する要因となっているという仮説を提示した。

3.ホーソン工場での実験において,E.メイヨーらは,能率向上の方策について調査を進め,職場の縦の命令系統,厳格な組織の編成,フォーマルな組織に基づく人間関係こそが労働者の能率に最も影響を与えていると実証した。

4.現代組織論を代表するC.バーナードは,組織均衡理論において,組織が提供する誘因と職員がその組織にとどまるか否かには関係性がなく,誘因が職員の貢献の度合いに見合わなくても,職員は組織にとどまるとした。

5.P.ディマジオらが唱えた組織の「制度的同型化」は,組織が直面する環境に応じて組織形態が選択されると考え,それに基づくと,中央省庁はそれぞれ対象集団や資源等の環境条件が異なるため,省庁間で異なる組織形態が採用され,同様に,行政組織と民間企業も異なる組織形態が採用される。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当な記述です。
古典的組織論におけるギューリックの組織理論についての記述です。(参考 H27no7)。

選択肢 2,3 ですが
科学的管理法テイラーシステムと呼ぶというのは妥当です。このシステムを実際に工場で実証してみようとしたところ、メイヨーらは、想定していなかった「工場内のインフォーマルな組織」が、「能率に影響を及ぼす」ことに気が付きました。従って、「科学的管理法が、インフォーマルな組織に基づく人間関係が能率を左右する要因という仮説を提示した」わけではありません。また、「フォーマルな組織に基づく人間関係こそが・・・能率に最も影響を与えている」と実証したわけでもありません。選択肢 2,3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
バーナードの組織均衡理論によれば、組織が職員に対し提供する誘因が、職員が組織に対する貢献と同等か、それを超える誘因であれば成員は離脱せず、組織にとどまります。「誘因と職員が組織にとどまるか否かには関係性がない」わけではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ディマジオらが唱えた組織の「制度的同型化」において、まず「同型化」とは、同業種の組織が集まり一つの組織フィールドとして構造化されると、お互いが似る力が働く、という理論です。そして、同型的組織変化の源泉は、大きく2つに分類されます。環境との機能的適合に対応した「競争的同型化」と、文化・社会的適合に対応した「制度的同型化」です。記述は「競争的同型化」についてと考えられます。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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