問 題
品種改良の対象形質やその遺伝的改変に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.イネの半矮性品種には,フィリピンの「IR8」や日本の「レイメイ」があり,両品種は異なる遺伝子の突然変異により短稈化している。いずれも多肥条件では徒長しやすい。
2.ダイズには,貯蔵タンパク質の各サブユニットレベルでの欠失変異体が多数存在し,種子のアミロース含量を増加させる目的で利用される。これらの欠失変異は,主に優性の変異である。
3.耐病性品種の育成には,交配による抵抗性遺伝子の導入が汎用されるが,品種の抵抗性は,病原体の突然変異で打破されることがある。一方,ナシの黒斑病抵抗性のように,突然変異で植物側が抵抗性になる例もある。
4.イネ障害型冷害の耐性検定には, 4 ℃ 以下の冷水を植物体に掛け流して種子稔性の低下を観察する方法がよく用いられる。北海道の耐冷性極強品種「はやゆき」の耐冷性は,一遺伝子で説明できる。
5.種子のデンプンがモチ性になるかウルチ性になるかは,Wx タンパク質*の存否で決まる。6倍体のコムギにはWx タンパク質が6 種類あり,そのうちの2 種類を欠失するとモチ性となる。
*Wx タンパク質:顆粒性デンプン合成酵素
解 説
選択肢 1 ですが
IR8、レイメイはともに同じ遺伝子による半矮性です。多肥栽培で無駄に徒長しない品種です。よって、選択肢 1 は誤りえす。
選択肢 2 ですが
欠失変異は主に劣性の変異です。また「タンパク質」含量増加目的で利用されると考えられます。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当な記述です。
選択肢 4 ですが
はやゆきは 2個の耐冷性遺伝子で説明できるとされています。これを知らなくても「耐冷性」という性質が「たった一つの遺伝子では説明つかないだろう」と考えて誤りと判断するとよいと思われます。(とはいえ、たった2つで説明がつく という点は非常に興味深い性質と個人的に感じました。)
選択肢 5 ですが
AABBDD AABBdd 、、、という流れで AA or aa、BB or bb、DD or dd の組み合わせと考えられるのでタンパク質は 8 種類あり、遺伝子の3つ全てが欠失するとモチ性と考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3 です。
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