公務員試験 H28年 国家一般職(農学) No.19解説

 問 題     

果実の取扱いに関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.成熟段階になって呼吸活性が一時的に増加する果実をクライマクテリック型果実と呼び,リンゴ,バナナ,ブドウ,キウイフルーツなどがこれに属する。クライマクテリック型果実の成熟には,サイトカイニンが深く関与しており,その合成を阻害すると成熟も抑制される。

2.果実の貯蔵性や輸送性を高めるために行う前処理を予措という。ウンシュウミカンでは,果実を温度5 ~10 ℃,湿度30 % 程度の条件で1 ~ 2 週間保持し, 3 ~ 4 % の減量になるように乾燥させると,果皮がある程度萎れて、果皮の呼吸・蒸散作用が抑制される。これを低温予措という。

3.リンゴやナシなどのバラ科植物の果実で,果肉などの一部が水浸状になって半透明にみえることをみつ症状(みつ入り)という。リンゴのみつ症状は,我が国では消費者に好まれる傾向があるが,みつ症状が進んだ果実は貯蔵には適さない。

4.渋ガキの渋味の原因は,果肉中の不溶性タンニンである。アルコール脱渋法は,果実にエタノールを噴霧し,約1 週間密封することによって,不溶性タンニンを可溶性タンニンに変えて果肉から滲出させる方法である。

5.果実の選別には,大きさや重さを基準とする等級選別と,外観を基準とする階級選別とがある。最近では,果実の内部品質を非破壊で測定する技術として,可視光線を果実に当て,その反射光を測定して選別を行う技術や,X線を用いて糖度を測定する技術が開発されている。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
クライマクテリック型果実の定義は妥当です。「エチレン」濃度の上昇が関与しています。バナナが代表例です。この性質を利用して、収穫後に「追熟」が行われることがあります。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
予措(よそ)の定義は妥当です。具体的には果皮を少し乾燥させます。冷房貯蔵の前に、一般的に15~20℃程度の環境で行います。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当な記述です。

選択肢 4 ですが
タンニンは「可溶性」です。不溶性ではありません。また、脱渋によって「可溶性を不溶性」に変化させることで渋みを感じなくさせます。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
「等級」は品質(形、色、味など)の格付け、「階級」は大きさの格付けです。また、糖度の非破壊測定では「近赤外線」が用いられます。X 線はレントゲンなどに用いられるもので、透過しちゃって終わりです。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

コメント