公務員試験 H28年 国家一般職(化学) No.18解説

 問 題     

分子振動に関する、次の記述の㋐、㋑、㋒に当てはまるものの組合せとして、最も妥当なのはどれか。

「分子中の原子は、その結合がばねのような働きをして互いが相対的に振動していることから、分子振動は調和振動子で近似される。

水素化物 H-X の分子振動を調和振動子として考える。原子 X の質量が、水素原子 H の質量より十分大きく X が動かないものとすると、H は、変位 x に比例する復元力 F = -kx を受けて振動しており、この分子振動の角振動数を ω、H の質量を m とすると、定数 k は、k = ( ㋐ )で表される。このシュレーディンガー方程式は波動関数を Ψ として

となる。ここで

として、方程式を解くと、Ψ は

かつ、ε = 2n+1 (cn はある定数、Hn はエルミート多項式、n = 0、1、2、3、……)となる。

となることから、振動のエネルギー準位は等間隔となることが分かる。

この水素化物の H を重水素 D に代えた場合、原子の質量は増えるが結合の力は変わらないとすると、振動エネルギー準位の間隔は( ㋑ )なり振動遷移に伴って吸収する電磁波の波数は( ㋒ )なる。」
   ㋐    ㋑     ㋒
1.mω2   狭く   小さく
2.mω2   狭く   大きく
3.mω2   広く   大きく
4.ω2/m   狭く   小さく
5.ω2/m   広く   大きく

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

㋐ は、基礎知識として覚えている人も多いと思います。個人的には「遠心力」が mrω2 をまず思い出し、似ている形だったと考えると、思い出しやすいと感じています。「k = mω2 です。正解は 1~3 です。cf:ωについて解けば、ω = √(k/m) です。

㋑ですが、E= ・・・の式に、㋐ を ω について解いたものを代入すれば

式を見れば「m が大きくなれば、ω部分は小さく」なります。従って E の間隔は狭くなります。吸収する電磁波のエネルギーと、このエネルギー準位の間隔が等しいのだから(←これは基礎知識。)、間隔が小さくなれば吸収する電磁波のエネルギーも小さくなります。

そして、波数とエネルギーは比例します。(←これも基礎知識。より波波してる方が元気、エネルギーも大きいというイメージ。)。つまり、エネルギーが小さければ、波数も小さくなります。

以上より、正解は 1 です。

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