公務員試験 H28年 国家一般職(教養) No.32解説

 問 題     

取扱いに注意することが必要な物質に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.塩化水素は,工業的には塩素と水素を直接反応させて得られる無色・刺激臭の気体であり,プラスチックの原料である塩化ビニルの製造などに用いられる。濃塩酸の蒸気は塩化水素であり,有毒なので,吸い込まないようにする必要がある。

2.赤リンと黄リンは,同じ元素から成る単体で性質が異なる。赤リンは,毒性が有り,空気中で自然発火するので,水中に保存する必要があるが,黄リンは,毒性は少なく化学的に安定しており,マッチなどに使用されている。

3.リチウムは,銀白色の軟らかい金属であり,水と激しく反応して水素を発生するため,湿気の少ない冷暗所に保存する必要がある。また,イオン化傾向の小さいリチウムを利用した電池は,小型で高性能であり,携帯電話などの電子機器に使用されている。

4.水銀は,融点が高く,常温で液体の金属であり,水銀とスズの合金は,ブリキと呼ばれ,缶詰などに利用される。水銀の単体や化合物は毒性を示すものが多く,水俣病や四日市ぜんそく等の原因となった。

5.メタノールとエタノールは,無色で毒性の有る液体であり,火気のない所で保存する必要がある。また,メタノールとエタノールは,カルボキシ基を持ち,分子間で水素結合を生じることから,分子量が同じ程度の他の炭化水素よりも融点や沸点が低い。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は、正しい記述です。

選択肢 2 ですが、リンの「同素体 = 同じ元素でできているが、結合や配列が異なるため、性質が異なる物質グループのこと」についての記述です。赤と黄についての記述が逆です。

選択肢 3 ですが、リチウムはアルカリ金属の一種です。イオン化しやすい元素の一つなので「イオン化傾向の小さいリチウム」が明らかに誤りです。

選択肢 4 ですが、水銀とスズの合金はアマルガムです。「ブリキ」は、鉄の上に Sn をメッキしたものです。また、水銀は四日市ぜんそくの原因ではありません。四日市ぜんそくの原因は亜硫酸ガス等です。

選択肢 5 ですが、「カルボキシル基」は「COOH」です。メタノールやエタノールといったアルコール類に共通の官能基は「ヒドロキシル基」で「OH」です。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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