公務員試験 H28年 法務省専門職員 No.11解説

 問 題     

集団内の個体の行動に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.他の個体が近くに存在することにより課題遂行が促進される現象は,オルポート(Allport , F . H .)により社会的促進と名付けられた。この現象は,社会的動物といわれる人に特有の現象であり,社会的昆虫といわれるアリにはみられないことが分かっている。

2.人の場合には,社会的促進の現象は課題が単純な場合にはみられ,課題が複雑になるとむしろ課題遂行が抑制されることが知られているが,ゴキブリの場合には,課題が単純であるか複雑であるかにかかわらず,社会的促進の現象がみられる。

3.社会的促進の機制について,ザイアンス(Zajonc, R.B.)は,他の個体が近くに存在すると覚醒水準(arousal level)が高まり,そのため,習熟している課題では,その課題に対する正しい反応(支配的反応又は優勢反応)の生起率が高まるという仮説を提唱した。

4.人の場合には,他者の存在により,単純な課題遂行であっても遂行量が抑制される現象も観察される。ラタネ(Latané, B.)らは,単純な作業を真面目にやることで他者から馬鹿にされるのではないかという評価懸念が高まるためだとして,これを社会的手抜きと呼んだ。

5.コットレル(Cottrell, N.B.)らは,他の個体が自分と同じ課題を行う場合は,注意の分散が生じることに伴う覚醒水準の高まりによって課題遂行量が上昇し,他の個体が自分の課題遂行を見ているだけの場合は,評価懸念により課題遂行量が低下することを見いだした。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
オルポートの社会的促進について、前半はその通りの記述です。しかし、アリなどにも見られる(!) 事が知られており、後半は妥当ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
ヒトと同様に、課題が複雑になるとむしろ課題遂行が抑制されることが知られています。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。

選択肢 4 ですが
「社会的手抜き」は、集団で共同作業を行う時に一人当たりの課題遂行量が人数の増加に伴って低下する現象のことです。この現象の原因は「動機付けの低下」です。「評価懸念が高まるため」ではないと考えられます。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
他者の存在が「注意の葛藤」を生み、これが動因水準引き上げにつながり、単純課題においては適切な反応増加、複雑課題においては不適切な反応増加につながる、という説を唱えたのが「サンダース」です。そして、他者や共行為者の存在により評価懸念が生まれ、社会的促進・抑制につながると考えたのがコットレルです。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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