問 題
社会調査に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。
1.参与観察では,インフォーマントと一定の距離を保ちつつ,適切な信頼関係を構築することが重要である。調査者はインフォーマントの話に虚心に耳を傾ける一方,部外者としてインフォーマントとできるだけ距離をとり,生活を共にするといった積極的な関与をしてはならない。
2.内容分析は,新聞,雑誌,テレビなどのマス・メディアが発するメッセージを扱う分析手法である。この分析では,メッセージの内容を解釈することが主たる目的になるため,計量的な分析が行われることはなく,客観性よりも妥当性が重視される。
3.郵送調査は,面接調査と比べて低コスト,広範囲で実施しやすいなどの利点があるとされている。一方で,実際に回答者本人が調査票に回答しているのかを確認することが難しいなどの欠点があるとされている。
4.統計的な社会調査では,調査標本が母集団の構成を正しく反映していることが望ましい。そのため,標本としてケースを抽出するときは,抽出がランダムになる方法を選択せず,母集団の特性を反映していると事前に推論されたケースを高い確率で抽出する方法を使う必要がある。
5.統計的な検定では,まず対立仮説の棄却/採択を判断し,棄却されたときは帰無仮説を採択するという手順を踏むこととなる。この手続は,厳密な科学的規準に則っており,採択された仮説は統計的には誤っている可能性がなく,正しいものとして受け入れなければならない。
解 説
選択肢 1 ですが
参与観察は、研究対象である社会や集団に調査者自身が加わり、生活をともにしつつ観察します。「部外者として・・・生活を共にするといった積極的な関与をしてはならない」わけではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
内容分析とは、雑誌等の内容を客観的かつ数量的に分析するための研究方法です。具体的には、記事面積や単語数などに注目して分析します。「計量的な分析が行われることはなく」という記述は妥当ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
郵送調査についての記述です。
選択肢 4 ですが
単純無作為抽出法、すなわち、母集団の全ての要素を対象とした上で、無作為に抽出する方法を用いることもあります。「抽出がランダムになる方法を選択せず」という記述は明らかに妥当ではありません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
統計的検定においては、採択された帰無仮説が本当は誤りである可能性があります。「採択された仮説は統計的には誤っている可能性がなく」というわけではありません。検定については、https://yaku-tik.com/yakugaku/kisu-5-5/ も参照してみてください。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3 です。
コメント