問 題
近年のユーロ圏における経済情勢に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。
1.ユーロ圏全体の実質経済成長率(前期比年率)は,2014 年第1 四半期にマイナス 2.1 % と大きく落ち込んだ後プラスで推移していたが,2015 年第1 四半期にはマイナス 0.7 % と減速した。2015 年第 1 四半期の主要国の実質経済成長率(前期比年率)をみると,これまで低迷していたドイツが 3.8 % と高い伸びを示したが,スペインについては 1.1 % と伸びがやや鈍化した。
2.ユーロ圏全体の失業率は,2015 年3 月には 11.3 % となり,2013 年初めから上昇傾向にある。また,ユーロ圏主要国の若年失業率(前年差)をみると,2015 年 3 月には,フランスが微増にとどまっている一方,ドイツ,イタリア,スペインは前年を大きく上回っており,ユーロ圏全体でも前年を大きく上回っている。
3.ユーロ圏の消費者物価上昇率(総合,前年比)は,2013 年 10 月に前年比マイナス 0.6 % となって以降,1 年以上前年比マイナスで推移していたが,2015 年 1 月には前年比 0.7 % と約 5 年ぶりのプラスとなった。その後,プラス幅は徐々に縮小し,2015 年 4 月には前年比 0.0 %となった。
4.欧州中央銀行(ECB)は,中期的な物価安定目標を 2 % に近い水準としており,2014 年 9 月に政策金利を 0.05 % に引き下げたほか,2015 年には量的緩和策を実施した。当該量的緩和策による購入対象資産は,インフレ連動債を含む国債,EU 機関債などとなっている。
5.ユーロの為替動向をみると,2014 年半ば以降 2015 年前半まで,ユーロはドルに対して増価傾向にある。また,ユーロ圏の域外財輸出の状況(輸出金額を指数化(2012 年 = 100)したものの後方 3 か月移動平均)をみると,同期間において減少傾向にあり,仕向先別寄与度(四半期別,前期比)をみると,同期間においてアメリカ合衆国向け輸出が減少し続けている。
解 説
選択肢 1 ですが
ユーロ圏は緩やかな経済成長傾向にあり、2015 年第1四半期もプラス成長です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
ユーロ圏全体の失業率は、2013 年初めから「減少傾向」にあります。上昇傾向ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
ユーロ圏の消費者物価上昇率は、2009 年 10 月のマイナス 0.1 % 以来のマイナスに 2014 年 12 月になり、更に 2015 年 1 月に、二ヶ月連続のマイナスとなりました。デフレ懸念が高まり、欧州中央銀行(ECB)が、1 月下旬に量的金融緩和策の実施を決定しました。「2015 年 1 月には・・・約 5 年ぶりのプラス」ではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
欧州中央銀行(ECB)の量的緩和策についての記述です。
選択肢 5 ですが
金融緩和を受けて 2015 年1月以降、ユーロ安が進んでいます。「2015 年前半まで、ユーロはドルに対して増加傾向にある」というのは妥当ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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