公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.46解説

 問 題     

経営の国際比較や国際経営に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.1980 年代に日本企業の生産性が伸び悩むと,日本では米国企業の経営を見習うべきとする主張が展開される。その代表的存在である W.G.オオウチは日本企業と米国企業の組織の理念型をそれぞれタイプJ,タイプAとして類型化したほか,日本企業のうちタイプAと類似した経営を行う企業をタイプZとして類型化し,タイプZの特徴が,高い生産性に結び付くことを示した。

2.企業の対外直接投資を説明する OLI パラダイムが契機となって,多国籍企業の生成と行動原理を解明しようとする多国籍企業論の研究が活性化する。主な多国籍企業論の研究としては,企業の多国籍化を,専ら取引コストによって説明しようとする寡占的相互作用モデルや,取引コスト以外の比較優位によって説明しようとする内部化理論などがある。

3.C.A.バートレットと S.ゴシャールは,多国籍企業の組織構造を,活動の配置と活動の調整の二つの基準で類型化して示した。この類型化によると,活動の配置が分散型で,活動の調整のレベルが低いものに対応する組織形態がマルチナショナル型の組織形態であり,そこで採られる国際戦略が「単純なグローバル戦略」である。

4.1950 年代後半には,米国と対比した日本的経営が研究され,終身コミットメントや年功賃金などがその特徴として指摘されるとともに,日本的経営に伴う生産性の低さについても言及された。しかし,日本の高度経済成長期を経て 1970 年代に入ると,P.F.ドラッカーに代表される欧米の経営学者は,逆に日本的経営を経済成長の重要な要因として評価するようになった。

5.多国籍企業におけるグローバル・イノベーションのパターンは,大きく四つに類型化される。このうち,本国本社がイノベーションの主体で,その成果を海外子会社に適用するタイプが,センター・フォー・グローバル型及びローカル・フォー・ローカル型であり,逆に海外子会社がイノベーションの主体となり,本社が共有しないタイプが,グローバル・フォー・グローバル型である。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
W.G.オオウチの Z 理論についての記述です。W.G.オオウチは、「米国企業」のうち、「タイプ J と類似」した経営を行う企業をタイプ Z として類型化しました。日本企業のうち、タイプ A と類似した企業を類型化したわけではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
ダニングの OLI パラダイムを契機とする、多国籍企業論についての記述です。OLI とは、所有者(ownership)、立地(location)、内部化(internalization) の略です。これら 3 つは、企業が多国籍化しようとする意思決定に際して、その基礎をなす潜在的な優位性の源泉とされます。前半部分は妥当と考えられます。後半部分ですが、「取引コスト」により多国籍化を説明するのは「内部化理論」です。「取引コスト」で説明するのが「寡占的相互作用モデル」という対応は、妥当ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
バートレットとゴシャールによる、多国籍企業のスタイルに関する I-R フレームワークについての記述です。I は「グローバル統合」、R は「ローカル適応」の程度です。グローバル企業の競争戦略に関して「活動の配置」と「活動の調整」を重視したのは「M.E.ポーター」です。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
日本的経営についての記述です。

選択肢 5 ですが
「ローカル・フォー・ローカル」は、子会社の研究開発拠点(ローカル)が、現地向け製品(フォー・ローカル)の拠点として機能するタイプと考えられます。「本国本社がイノベーションの主体」ではありません。また、「本社が共有しないタイプ」という記述は、ローカル・フォー・ローカルに該当します。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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