公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.29解説

 問 題     

不法行為に関するア〜オの記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア.数人が共同の不法行為によって第三者に損害を加えたときは,各自が連帯してその損害を賠償する責任を負うが,その行為者を教唆した者も,共同行為者とみなされ,各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。

イ.土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって第三者に損害を生じた場合,その工作物の所有者は,損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは,その損害を賠償する責任を負わない。

ウ.ある事業のために他人を使用する者は,被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を原則として賠償する責任を負うが,使用者が第三者にその損害を賠償したときは,使用者は被用者に求償権を行使することができる。

エ.未成年者が不法行為によって第三者に損害を加えた場合,その未成年者は,自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは,その損害を賠償する責任を負わない。この場合において,その未成年者を監督する法定の義務を負う者は,その義務を怠らなかったことを証明したときに限り,その損害を賠償する責任を負わない。

オ.精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に第三者に損害を加えた者は,故意により一時的にその状態を招いたときは,その損害を賠償する責任を負うが,過失により一時的にその状態を招いたときは,その損害を賠償する責任を負わない。

1.ア,イ
2.ア,ウ
3.イ,オ
4.ウ,エ
5.エ,オ

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

不法行為:ある行為により他人に生じた損害を賠償する責任が生じる場合、その行為を不法行為といいます。民法体系において、契約と並び、重要な債権発生原因です。関連判例いっぱいあるけど、まずは条文をしっかり学ぼう!というとても教育的な問題です。

記述 ア は妥当です。
民法第 719 条第 2 項です。

記述 イ ですが
これは工作物の「占有者」についてです。土地工作物について、第1次的に責任を負うのは「占有者」です。占有者は、損害発生防止に必要な注意をした時、損害賠償責任を免れます。この時、損害賠償責任は所有者が有します。従って、所有者が注意をしたときに賠償責任を負わないわけではありません。民法 第 717 条です。記述 イ は誤りです。

記述 ウ は妥当です。
使用者等の責任について、民法第 715 条です。

記述 エ ですが
民法第 712 条により、前半部分は妥当です。未成年者は、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、賠償責任を負いません。後半ですが、民法第 714 条第 1 項により、「・・・又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りではない」とあります。「義務を怠らなかったことを証明したときに限り」ではありません。記述 エ は誤りです。

記述 オ ですが
民法第 713 条により、「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない」です。故意だけでなく、過失によって一時的にその状態を招いたときも、賠償責任を負います。記述 オ は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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