問 題
委任に関する ア〜オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。
ア.委任契約が成立するためには,委任者と受任者との間の事務処理委託に関する合意のほかに,委任者から受任者に対する委任状など書面の交付が必要である。
イ.有償の委任契約においては,受任者は,委任の本旨に従い,善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負うが,無償の委任契約においては,受任者は,委任の本旨に従い,自己の事務をするのと同一の注意をもって事務を処理する義務を負う。
ウ.委任契約の受任者は,事務処理の過程で委任者の要求があれば,いつでも事務処理の状況を報告する義務があり,委任が終了した後は,遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
エ.委任契約の受任者は,事務処理に当たって受け取った金銭その他の物及び収取した果実を委任者に引き渡さなければならない。
オ.委任契約は,委任者の死亡により終了するから,委任者の葬式を執り行うなど委任者の死亡によっても終了しないという趣旨の委任契約が締結された場合であっても,かかる委任契約は委任者の死亡により終了する。
1.ア,イ
2.ア,ウ
3.イ,オ
4.ウ,エ
5.エ,オ
解 説
記述 ア ですが
民法第 643 条により、「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生」じます。諾成、不要式契約の一種です。「書面の交付が必要」ではありません。記述 ア は誤りです。
記述 イ ですが
民法第 644 条により、「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負」います。有償、無償の区別なく、委任契約において善管注意義務があります。記述 イ は誤りです。
記述 ウ は妥当です。
受任者による報告に関する、民法第 645 条です。
記述 エ は妥当です。
受任者による受取物の引渡し等に関する、民法第 646 条です。
記述 オ ですが
前半部分は妥当です。委任契約は「委任者又は受任者の死亡」で終了します。(民法第 653 条 第一号)。しかし、判例によれば、死後事務委任契約について、当事者の合意があれば、民法第 653 条は合意を否定するものではないとされています。つまり、趣旨にのっとり、委任者の死亡によっても委任契約が終了しない、ということです。記述 オ は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
コメント