公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.27解説

 問 題     

弁済に関する次の記述のうち,判例に照らし,妥当なのはどれか。

1.連帯債務の弁済においては,連帯債務者のうち少なくとも一人が弁済することに賛同していれば,他の連帯債務者の意思に反する場合であっても,利害関係を有しない第三者は弁済することができ,意思に反する連帯債務者との関係でもこの弁済は有効である。

2.利害関係を有しない第三者は,債務者の意思に反して弁済することができないところ,利害関係を有する者には,物上保証人,担保不動産の第三取得者など弁済をすることに法律上の利害関係を有する第三者のみならず,債務者の配偶者と第三者の配偶者が兄弟である場合の第三者のような,単に債務者と親族関係にある第三者も含まれる。

3.借地上の建物の賃借人は,土地賃貸人との間には直接の契約関係はないが,土地賃借権が消滅する場合,土地賃貸人に対して賃借建物から退去して土地を明け渡すべき義務を負う法律関係にあり,土地賃借人の土地賃貸人に対する敷地の賃料を弁済することについて利害関係を有する。

4.指名債権の二重譲渡において劣後する譲受人は,対抗要件を先に具備した他の譲受人に対抗し得ないから,債務者において,その劣後する譲受人が真正の債権者であると信じてした弁済につき過失がなかった場合であっても,この弁済は効力を有しない。

5.無権限者のした機械払の方法による預金の払戻しについても民法第478 条の適用があるが,銀行が預金の払戻しにつき無過失であるというためには,払戻しの際に機械が正しく作動していれば足り,銀行において,機械払システムの設置管理全体について,可能な限度で無権限者による払戻しを排除し得るよう注意義務を尽くしていたことまでは必要ない。

(参考) 民法(債権の準占有者に対する弁済)
第478 条 債権の準占有者に対してした弁済は,その弁済をした者が善意であり,かつ,過失がなかったときに限り,その効力を有する。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
判例(大判昭14.10.13)によれば、「第三者の弁済が連帯債務者の一人の意思に反しない場合であっても、他の連帯債務者の意思に反するときは、その弁済は、その意思に反する連帯債務者に対しては無効」です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
判例(大判 S14.10.13)によれば、「単に債務者と親族関係にある第三者」は、利害関係があるとはいえません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
最判 S 63.07.01 によれば、「借地上の建物の賃借人は、地代の弁済に関し、法律上の利害関係を有する第三者である」とあります。

改正ポイント!用語の変更
選択肢 4 ですが
二重譲渡において劣後する譲受人を、真正の債権者と信じてした弁済は、民法改正前における「債権の準占有者に対する弁済」に該当します。弁済をした者が善意無過失なので、第 478 条により、効力を有します。※改正民法により「準占有者」は、より広い概念を表す受領権者」としての外観を有する者と表すようになりました。注意が必要です!

選択肢 5 ですが
最判 H15.4.8 によれば、「銀行が無過失というためには、機械払システムの設置管理の全体について、可能な限度で無権限者による払戻しを排除し得るような注意義務を尽くしていたことを要する」とあります。「・・・注意義務を尽くしていたことまでは必要ない」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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