公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.23解説

 問 題     

占有権及び所有権に関する ア〜オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。

ア.所有の意思がある占有を自主占有といい,この所有の意思の有無は,占有取得の原因たる事実によって外形的客観的に決められるべきものであるから,盗人の占有も自主占有に当たる。

イ.相続人が,被相続人の死亡により,相続財産の占有を承継したばかりでなく,新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始し,その占有に所有の意思があるとみられる場合においては,当該被相続人の占有が所有の意思のないものであったときでも,当該相続人は民法第185 条にいう新権原により所有の意思をもって占有を始めたものということができる。

ウ.占有者が他人に欺かれて物を交付した場合,当該占有者の占有移転の意思には瑕疵があるといえるため,当該占有者は,占有回収の訴えにより,その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。

エ.他人の土地上の建物の所有権を取得した者が,自らの意思に基づいて自己名義の所有権取得登記を経由した場合には,たとえ建物を他に譲渡したとしても,引き続き当該登記名義を保有する限り,土地所有者による建物収去・土地明渡しの請求に対し,当該譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。

オ.建築途中のいまだ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合における建物所有権の帰属は,動産の付合に関する民法第 243 条の規定に基づいて決定される。

1.ア,イ,ウ
2.ア,イ,エ
3.ア,エ,オ
4.イ,ウ,オ
5.ウ,エ,オ

(参考) 民法(動産の付合)
第243 条 所有者を異にする数個の動産が,付合により,損傷しなければ分離することができなくなったときは,その合成物の所有権は,主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも,同様とする。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

記述 ア は妥当です。
所有の意思がある占有=自主占有です。

記述 イ は妥当です。
最判 S46.11.30 です。

記述 ウ ですが
大判大11.11.27 によれば、詐取された場合や遺失した場合は、占有回収の訴えは認められません。記述 ウ は誤りです。

記述 エ は妥当です。
最判 H6.2.8 です。

記述 オ ですが
建築途中のいまだ独立の不動産に至らない建前は、動産扱いです。そして、最判 S54.1.25 によれば、仕上げると価値が急激にあがると言えるので、単純な付合ではなく、民法第 246 条の「加工」の規定に基づき決定されます。「民法 第 243 条の規定に基づいて」ではありません。記述 オ は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

コメント