公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.1解説

 問 題     

民主主義に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.ピューリタン革命期の水平派(レヴェラーズ)は,人民こそが世俗の一切の政治的権威の源泉であるという理念の下に,革命議会の議員は全ての成年の男性及び女性による普通選挙によって選ばれなければならないという人民主権論を展開した。

2.J.J.ルソーは,国家は私的な意志の総和を超えた一般意志によって運営される必要があるとして代表制を批判し,人民全員が政府の立法及び行政活動に直接関与しなければならないとする急進的な民主主義論を展開した。

3.J.S.ミルは,個人の権利と利益の擁護という自由主義の理念を貫徹するためには,全ての市民が政治的意思決定に参加する権利を持つ必要があるとし,民主的な政治参加とは,自らの選出した代表が同意した法律によって統治される自由であると論じた。

4.J.シュンペーターは,市民は公共の利益に関する判断を行う合理的で理性的な能力を持つとして,そのような市民によって選ばれたエリートによる統治が現実的に最善の結果をもたらすとする,エリート民主主義論を説いた。

5.R.ダールは,米国では権力を独占した一枚岩的なエリート層による統治が行われていると批判し,そのようなエリート支配から脱するための多元的な集団間の競争に基づくポリアーキーを,民主主義の理想として掲げた。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ピューリタン革命は、清教徒革命とも呼ばれる、1639 年から、イングランド・スコットランド・アイルランドで起きた内戦・革命のことです。一方、女性参政権は 18C からフランスで始まり、19 世紀頃に運動が本格化しました。従って「・・・及び女性による普通選挙によって・・・」という部分が妥当ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
ルソーは、一般意志による運営を主張し、代表制を批判しました。前半部分は妥当です。後半ですが、「及び行政活動」の部分が不要です。ルソーによれば、行政活動まで全員が関与する必要はないと考えました。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
ミルは民主主義と自由主義の橋渡しに努力しました。

選択肢 4 ですが
シュンペーターは、民主主義を「有能な指導者選出のために『競争原理』を導入する手段」とみなしました。シュンペーターは、市民の理性能力は懐疑的だが、指導者を選挙で定期的に選ぶ能力は十分備えていると考えました。「市民は・・・合理的で理性的」とは考えていません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ダールは、アメリカ社会のケーススタディを通し、エリート論に基づくエリート層による独占は存在せず、権力がさまざまな利益を代表する複数の社会集団間で共有されていると結論づけました。この現実の民主政を、理想の民主政と区別し、ポリアーキーと名付けました。このような利益集団や圧力団体などに注目する議論を多元主義、多元的民主主義論といいます。「ポリアーキーを、民主主義の理想として掲げた」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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