公務員試験 H27年 国家一般職(化学) No.23解説

 問 題     

金属カルボニル錯体に関する次の記述の ㋐ ㋑ ㋒ に当てはまるものの組合せとして最も妥当なのはどれか。

「金属カルボニル錯体が、アンミン錯体やアクア錯体と異なっている点は、中心金属の酸化数について低酸化数金属のカルボニル錯体の安定化が大きいということである。この原因は、金属 (M) と一酸化炭素 (CO) 間の結合(M-CO結合) の ㋐ 結合性にある。

また、㋐ によって CO 間の三重結合が ㋑ なることから CO 伸縮振動の赤外吸収スペクトルについては気体の CO の吸収より [Fe(CO)5] のものの方が ㋒ 波数側に観測される。」

 ㋐  ㋑  ㋒

  1. σ 供与 強く 高
  2. σ 供与 弱く 低
  3. π 逆供与 強く 高
  4. π 逆供与 弱く 高
  5. π 逆供与 弱く 低

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

金属カルボニル錯体 とは、COを配位子に持つ遷移金属錯体のことです。金属と一酸化炭素間では、C≡O から 金属側へ電子が 「σ供与」 される一方、金属側から C≡O へ電子が「π供与」されます。非常に多くの遷移金属と CO はカルボニル錯体を形成するのですが、これはこの金属側から C≡O 側への π 逆結合による安定化の結果です。

この結果として、C≡O の三重結合性は小さくなります。(σ1本渡して π1増えるイメージなので)。「三重結合性が小さくなる」ということは「結合がゆるくなるイメージ」です。その結果 IR によって測定できる振動数は小さくなります。IR 上ではより低波数側にピークが見られるということです。従って、㋐が π 逆供与、㋑が弱く、㋒が低い となります。

以上より、正解は 5 です。
参考 IR スペクトルの特性吸収(他サイトへのリンク)

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