公務員試験 H27年 法務省専門職員 No.53解説

 問 題     

社会変動に関する学説についての記述として最も妥当なのはどれか。

1. A. コントは、人間の精神や人間知識の諸部門は、神学的すなわち虚構の段階、形而上学的すなわち抽象の段階、実証的すなわち科学的段階の三つの段階を経るという、三段階の法則を提起した。

2. H. スペンサーは、社会は、個人の意志が全体よりも上位にある産業型社会、又は軍事が社会生活の一切を左右する軍事型社会のいずれかに分類できるとした。そして、産業型社会と軍事型社会は並存せず、社会は産業型社会から軍事型社会へと進化するとした。

3. W. W. ロストウは、史的唯物論を提唱し、K. マルクスの観念論を批判した。また、資本主義社会に限っては、社会主義社会を経ることなく、経済成長によって、伝統的社会、封建社会、高度大衆消費社会の三つの成長段階をたどるとした。

4. W. F. オグバーンは、ある社会で一旦支配する側になった者は、その社会で支配されることはないとした。また、ある社会の支配者であるエリートが、未だ支配していない別の社会へと移動していき、その移動先の社会を支配していくことをエリートの周流とした。

5. V. パレートは、文化全体の構成要素は相互連関的で、そのうちの一要素が変化すると、連関した他の部分は適応し文化全体が進化を遂げるが、その間にタイムラグが生ずるとした。そして,20世紀の産業社会においては、物質文化の変化は、非物質文化の変化に遅れることを指摘した。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
コントスペンサーは「社会学の父」と呼ばれます。コントは「予見するために観察する。予知するために予見する」という名言が広く親しまれています。

選択肢 2 ですが
スペンサーは「軍事型社会」から「産業型社会」への進化を説きました。逆の記述になっています。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
ロストウは「段階説」を唱えました。これは経済発展段階説の1つで、一国の経済発展の共通性を指摘しています。ロストウは産業革命期を「離陸」と称し、経済発展を「5段階」とするモデルを提唱しました。「三つの成長段階」ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4,5 ですが
オグバーン「文化遅滞論」を述べました。また、パレート「エリートの周流」という概念を提唱しました。選択肢 4,5 は主語が逆です。また、文化遅滞論は、文化の方が遅滞する、という指摘です。エリートの周流とは、政治上のエリートには2タイプいて、交互の支配が循環し、政治的安定を果たすという理論です。選択肢 4,5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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