公務員試験 H27年 法務省専門職員 No.16解説

 問 題     

箱庭療法 (sandplay therapy) に関する記述A~Dのうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

A. 箱庭療法を発展させたカルフ (Kalff, D. M.) が同療法の治療において強調したのは、自由な表現が許容されながらもしっかりと守られているという「自由にして保護された空間」を治療者と対象者との関係の中につくり出すことであり、それにより母子一体性が再現されるとした。

B. 箱庭療法では、対象者は治療者に見守られながら、砂箱という枠の守りの中で、自由に無意識的なイメージを表現できる。同療法の適用範囲は広く、自我の弱い境界例や急性期の統合失調症の治療にも活用できるとされている。

C. 箱庭療法を我が国に導入した河合隼雄は、ユング心理学の理論に基づき、対象者が箱庭に置いたミニチュアについて象徴的に解釈することを重視し、その解釈を対象者に伝えることにより無意識を言語化し、気付きを促すことが重要であるとした。

D. 箱庭療法では、治療者が対象者と一緒に箱庭作りの過程を味わうことが大切であるとされており箱庭作りの場面において、治療者はただ鑑賞するのではなく、対象者に作品について話してもらったり、作っているときの感情について質問したりするなど、積極的に介入する。

1. A
2. D
3. A B
4. B C
5. C D

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

箱庭療法は
木箱に入った砂の上に自由にものを並べてイメージ表現を行う心理療法です。言語不要である点、制作過程における自己治癒力の働き、クライエントが洞察を得る効果などがあるとされます。自由で保護された空間における自己治癒力に信頼をおくことが大切であり、基本的にセラピストはクライエントに寄り添い、鑑賞する態度を保つことがより重要とされます。

記述 A は妥当です。

記述 B ですが
自我の統制力の弱い、精神病水準のクライエントについては、寛解期以外適用しないのが原則です。記述 B は妥当ではありません。

記述 C ですが
「解釈を伝えること・・・が重要である」という部分から誤りと判断できるのではないでしょうか。記述 C は妥当ではありません。

記述 D ですが
「ただ鑑賞するのではなく・・・、積極的に介入する」わけではありません。記述 D は妥当ではありません。

以上より、妥当な記述は A です。正解は 1 です。

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