問 題
自殺の意図のない、リストカット等の故意に自分を傷付ける行為に関する記述 A~D のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。
A. 精神科医のメニンガー (Menninger, K. A.) は、自傷行為を「局所的自殺」と呼び、ある種の危機的状況を生き延びるために身体の一部を犠牲にする行動と捉えた。実際に、自傷経験者の報告によると、リストカットによって即効的に、ある程度の持続性をもって、心理的苦痛が軽減するといわれる。このため、リストカットをはじめとする自傷行為は、嗜癖化することが多い。
B. 自傷経験者は、被虐待経験、過食や拒食などの食行動の異常、ボディ・イメージの問題がある場合が多いほか、知覚が鋭敏で、しばしば心霊現象や超能力的な体験を報告する。一方、性格は一般的に内向的で臆病であり、攻撃衝動が自分に向かいやすく、他者に暴力を振るったり,スピード運転などのリスクを犯すような刺激的な体験を求めたりすることはほとんどない。
C. 自傷者のアセスメントにおいては、その方法や損傷の程度にかかわらず、自傷行為が自殺を目的とするものか否かを評価しなければならない。また、自傷行為の様態や深刻さの評価に当たっては、複数の自傷の方法を用いる、仲間等とではなく一人で行う、自傷行為に先行する物質摂取がある、自傷時にあまり痛みを感じなかったり自傷をした記憶が抜け落ちていたりするなどの解離症状が見られる、といった点に着目することが重要である。
D. 精神科医のウォルシュ (Walsh, B. W.) は、自傷のアセスメントに関して、自傷創に関心を向けると自傷の嗜癖化が進むおそれがあるため消毒や縫合等の手当ては必要であっても、自傷創をつぶさに検分することは禁忌とした。一方、自傷をするその人自身により関心を向けること、控えめで冷静な態度、決め付けをしない思いやりの心、時には自傷行為に対する援助者自身の苦悩を率直に話し合おうとする誠実性を備えた態度が重要であるとした。
1. A B
2. A C
3. B C
4. B D
5. C D
解 説
記述 A は妥当です。
記述 B ですが
「知覚が鋭敏、しばしば心霊現象や超能力的体験を報告する」という部分は自傷と関連性が低いと判断できるのではないでしょうか。この記述は HSP を意識したものと思われます。記述 B は誤りです。
記述 C は妥当です。
記述 D ですが
自傷創をつぶさに検分するのが「禁忌」というのは疑問がある表現と判断できるのではないでしょうか。自傷には「感情的に反応してはいけない」、「淡々と傷を観察、消毒等を行うのが妥当な対処」とされています。記述 D は誤りと考えられます。
以上より、妥当な記述は A,C です。正解は 2 です。
コメント