公務員試験 H27年 法務省専門職員 No.3解説

 問 題     

記憶内容の変容に関する記述 A~D のうち妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

A. ロフタスとパーマー (Loftus, E. F. & Palmer, J. C.) は、自動車の衝突事故の映画を見せた後、半数の実験参加者には「車が『衝突』した時のスピードはどれくらいだったか。」と質問し,残りの半数には、「車が『激突』した時のスピードはどれくらいだったか。」と質問した。その結果、『衝突』群よりも『激突』群の方が、自動車の速度を速く見積もった。このように、目撃記憶が出来事の後に与えられる情報によって変容してしまうことを、事後情報効果という。

B. ロフタス (Loftus, E. F.) らによれば、人は、ナイフなどの凶器を持った犯人に遭遇すると恐怖心から覚醒が高まり、凶器や、凶器を用いて実行される犯行そのものだけでなく、それ以外の細かな周辺状況(犯人の顔や靴の色など)についても鮮明に記憶する。この現象は、凶器効果と呼ばれる。

C. バートレット (Bartlett, F. C.) は、物語や絵などの有意味な材料を使って想起の反復を求める記憶実験 (系列的反復再生法) において、記憶内容が徐々に変化し、不正確になることを見いだした。そして、それはエビングハウス(Ebbinghaus, H.)の忘却曲線に従ったものであると説明した。

D. ブラウンとクーリック (Brown, R. & Kulik, J.) によれば、フラッシュバルブ記憶とは、米国の大統領暗殺のような衝撃的な出来事を知ったとき、「自分がどこで何をしていたか」という自分の状況が鮮明に記憶に残るという現象である。しかし、コンウェイ (Conway, M. A.) が指摘するように、その後の研究によって、フラッシュバルブ記憶の細部は当初思われていたほど正確ではないことが示されている。

1. A
2. C
3. A D
4. B C
5. B D

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

記述 A は妥当な記述です。
事後情報効果についての記述です。

記述 B ですが
凶器効果とは、殺人や強盗事件等に遭遇した場合,目撃者の注意が犯人の凶器に釘付けになり,犯人の人相や着衣に関する記憶が抑制される現象です。「細かな周辺状況についても鮮明に記憶する」わけではありません。記述 B は誤りです。

記述 C ですが
エビングハウスは無意味づづリによる記憶保持に関し、忘却曲線を見出しました。一方、バートレットは「幽霊たちの戦い」という意味のある、聞いたことのない話の再生テストを繰返し、再生内容の質的変化(短くまとまる など)を明らかにした上で、スキーマ(過去の経験を構造化した認知枠組み)に基づいた記憶をすると考えました。「エビングハウスの忘却曲線に従って、変化、不正確になる」という記述は明らかに誤りです。

記述 D は妥当な記述です。
フラッシュバルブ記憶についてです。

以上より、正しい記述は A,D です。正解は 3 です。

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