問 題
子どもの発達に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。
1. 生後間もない新生児に向かって、大人が舌を出したり、口を開けたりしてみせると、新生児もこれと同じ顔の表情を示す。これはインプリンティング (刷り込み) と呼ばれ、新生児が周囲の人々から積極的な働き掛けを引き出すために能動的に行うものと考えられている。
2. 特定の対象に対して抱く、親密で情緒的な絆を愛着 (アタッチメント) という。養育者との健全で安定した愛着を形成した子どもは、一般に養育者にあまり関心を示さず、その在・不在に関係なく探索活動を行い、養育者と離れる際にも不安や混乱を示すことはほとんどない。
3. 子どもの前に三つの山の模型を置き、子どもが見ている位置以外の地点に置いた人形からそれらの山がどのように見えるかと尋ねると、4、5歳児は正しく答えることができない。J.ピアジェは、これは子どもの自己中心性の表れであり、他者の視点に立てないためであると捉えた。
4. 一卵性双生児を対象にした双生児研究により、遺伝的要因や神経系の成熟要因よりも、訓練や学習といった経験や環境の要因が発達にとって重要であること、さらに、子どもに訓練や学習を行う時期は早ければ早いほど効果的であることが示されている。
5. 乳幼児期の子どもは、有能なモデルへの愛着から同性の親に同一視し、その行動を模倣することで性役割を獲得していく。一方、異性の親に対しては、同性の親を取られまいとして敵対心をもつ。こうした心性を、S.フロイトは、エディプス・コンプレックスと名付けた。
解 説
選択肢 1 ですが
「舌出し模倣」についての記述です。インプリンティングは、ある時期に特定の物事がごく短時間で覚え込まれ、長時間持続する学習現象の一種です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
記述は回避型についてです。養育者との健全で安定した愛着を形成した子どもは、養育者に関心を示し、不在時に不安を感じるとされます。安定型と呼ばれます。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
ピアジェの三つ山問題です。脱自己中心性を示し、三つ山問題に正しく答えることができるようになるのは具体的操作期(7~11歳)です。
選択肢 4 ですが
ゲゼルは一卵性双生児の階段のぼりの実験から、訓練しなくても身体的成熟が進めば、訓練を行った場合と同等の技能を示すことを明らかにしました。そして、学習成立のための内的な準備状態としての「レディネス」という概念を提唱しました。成熟優位論といいます。「環境要因の重要性」ではありません。ちなみに、環境要因の重要性を提唱したのは「ワトソン」です。(参考 H26 法務 no9)。
選択肢 5 ですが
エディプスコンプレックスとは、男子が母親に性愛感情をいだき,父親に嫉妬する無意識の葛藤感情のことです。つまり、同性の親への嫉妬心です。「異性の親に対して・・・敵対心」ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3 です。
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