公務員試験 H27年 国家一般職(行政) No.63解説

 問 題     

てんかんの手術で脳梁が切断されるなどにより、脳の左右半球の連絡が断たれた患者の脳を分離脳 (split brain) という。言語野が脳の左半球に在る分離脳患者を対象に、R.スペリーらが行った実験の結果に関するA~Dの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

<実験の概要>
分離脳患者の前にスクリーンを置き、スクリーンの中央にある固視点を注視させ、スクリーンの左右に物品の名前 (単語) や絵などの視覚刺激を瞬間的に提示した後、スクリーン上に提示されたものについて質問した。

また、スクリーンの下から右手又は左手を伸ばさせ、手元が見えない条件下で、スクリーン上に提示した絵や単語と同じ物品を手探りで同定させたり (図A) 、提示した絵や単語が示す物品の絵を描かせたりした。

図Bは、分離脳患者の脳の二つの半球への感覚入力に関する模式図である。

A. 分離脳患者にスクリーン上の固視点を注視させた状態で、スクリーンの左側に物品の絵を提示すると、絵と同じ物品を左手で探して選ぶことができたが、その物品の名前を述べることはできなかった。

B. 分離脳患者にスクリーン上の固視点を注視させた状態で、スクリーンの右側に物品の名前 (単語) を提示すると、物品の名前を声に出して読むことができたが、右手でその物品の絵を描くことはできなかった。

C. 分離脳患者に、見えない物品を左手で触らせ、右手でその物品の絵を描いてもらうと正しく描くことができ、また、その物品の名前を正しく述べることができた。

D. 分離脳患者にスクリーン上の固視点を注視させた状態で、「スーツケース」という複合語の「スーツ」をスクリーンの左側に、「ケース」を右側に瞬間的に提示すると、「ケース」という単語を見たと答えたが、どのような種類のケースかについては答えられなかった。

1. A C
2. A D
3. B C
4. B D
5. C D

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

記述 A は妥当です。
視野の左半分の情報は右脳で受け取られます。そして、左手は右脳支配です。従って、言語では表せませんが「右脳が見ており」、「右脳による指示で左手を動かすこと」で、同じ物を選ぶことができます。視野ー網膜ー神経の関係について、リンク先(薬学、これで OK)を参照すると、カラフルで理解が容易になると思います。

記述 B ですが
前半は妥当です。後半ですが、「左脳が見ており」、「左脳による指示で右手を動かすこと」で、物品の絵を書けると考えられます。記述 B は誤りです。

記述 C ですが
左手で触って「右脳が理解」したとしても、この情報は左脳に伝わりません。従って、右手で絵を書くことができないと考えられます。また、左脳に情報が伝わらないため、名前も述べることができないと考えられます。記述 C は誤りです。

記述 D は妥当です。
「スーツ」を「右脳が見」て、「ケース」を「左脳が見」ます。言葉になるのは「ケース」だけです。そして、スーツという情報、ケースという情報は共に伝わらないため、ケースの種類を答えられません。

以上より、正解は 2 です。

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