公務員試験 H27年 国家一般職(行政) No.58解説

 問 題     

自我・自己・人間像を対象にした社会学的研究に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1. C.H.クーリーは、近代的な自己が、他者との関係の中で自らを反省的に捉えるのではなく、専ら自己愛ばかりを働かせ、閉鎖的になっている状態を批判し、これを「鏡に映った自己」と呼んだ。

2. R.カイヨワは、文化史家 J.ホイジンガによる「ホモ・ルーデンス」(遊戯するヒト) の議論を継承して遊びに関する探究を行い、これを従来の聖-俗理論に接続することで独自の聖-俗-遊3元論を構築した。

3. E.フロムは、古い伝統から解放されて自由を得た近代的な知識人が、人間的な絆を喪失して孤独感を覚え、価値観の多様化した世界の中で技術的知識への志向を強めている姿を「テクノクラート」と呼んだ。

4. W.H.ホワイトは、諸個人は自身に潜む真の動機のレパートリーから成る「動機の語彙」に基づいて行為していると考え、その動機の連鎖の探究によって社会の構造と過程が明らかになると説いた。

5. C.W.ミルズは、組織に帰属し、組織のために貢献し、組織に忠誠を誓う人のことを「オーガニゼーション・マン」(組織人) と表現し、主体的な意思決定を行う自律的な行為者像の典型であると論じた。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
クーリーは、社会的自我が形成される場である家族、仲間集団、近隣集団などの基本的社会集団を第一次集団と呼びました。社会的自我は、人間が他者の反応に対する自我の反応として形成されるとし、これを説明するために「鏡に映った自我」という概念を提唱しました。「専ら自己愛ばかりを働かせ、閉鎖的になっている状態」を呼んだわけではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
カイヨワ遊びに関する探求についての記述です。

選択肢 3 ですが
テクノクラートとは、科学者、技術者出身の政治家、官僚のことです。ベルは、テクノクラートが専門知識により大きな発言権を獲得し政治家と対立することが、脱工業化社会の大きな問題となるだろうと主張しました。「人間的絆を喪失し孤独感を覚え・・・技術的知識への志向を強めている姿」ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
「動機の語彙」は、行為を解釈するために用いられる、社会に既存の語彙のことです。ある行為を説明する真の動機があるわけではなく、他者がある行為を解釈するための語彙が「動機の語彙」であるという考え方です。C.W.ミルズにより提唱されました。ホワイトではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
オーガニゼーション・マンとは、組織的人間と訳されます。企業のために自己のすべてをなげうって尽くす人です。「主体的な意思決定を行う自律的な行為者像」ではありません。また、論じたのは W.H.ホワイトです。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

コメント