公務員試験 H27年 国家一般職(行政) No.56解説

 問 題     

近代化論に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1. 未開社会における宗教生活の原初形態に社会の原点を見いだし、その上で近代産業社会の現状
を見据えた E.デュルケムは、前近代的な有機的連帯から近代的な機械的連帯へと向かう大きな社会変動について論じた。

2. 理念型的方法に基づく独自の方法論を確立し、社会学的近代化論の礎を築いた M.ヴェーバーは、支配関係に関する詳細な議論を展開し、近代官僚制の特徴として規則の体系、権限のヒエラルヒー、職務の専門化などを挙げた。

3. 近代化に伴う社会的分化について探究を行った G.ジンメルは、エスニシティの異なる諸集団が競争と闘争を繰り返し、その結果個人の自由が奪われる過程を社会圏の交錯 (交差) として論じ,それを克服することが近代の課題の一つであるとした。

4. 人々が依拠する行為の選択基準をパターン変数として定式化した T.パーソンズは、近代化の過程で、全ての客体を同じように取り扱う普遍主義は衰退し、身内びいきなどのように対象との間の特定の関係に従って客体を取り扱う個別主義が台頭してきたと論じた。

5. サービス産業が発展し、インターネット技術によって情報化が高度に進んでいる状態のことを脱工業化社会と呼んだ D.ベルは、この段階になると人々の価値観の一元化やイデオロギー化が著しくなると論じた。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
デュルケムが論じた「機械的連帯」は、分業が進んでいない社会で成員が類似することを条件とする連帯でのことです。「有機的連帯」は、分業が進んだ社会で異なる専門的機能を担う成員の相互依存による連帯です。前者より後者が優越するようになることが歴史的法則と考えました。「前近代的な有機的連帯から近代的な機械的連帯へ」ではありません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
社会学的近代化論の礎を築いた M.ヴェーバー についての記述です。

選択肢 3 ですが
ジンメルは集団に属する個人について、集団が大きくなるほど個人と集団の結合が小さくなり、個性が発達する一方、集団は類似していくと考えました。さらに、集団が大きいことにより個人との結合が小さくなることで、個人が複数の集団に属するという社会圏の交錯が置き、個性がさらに発達すると考えました。「競争と闘争を繰り返し・・・」という内容は妥当ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
初めの部分は妥当です。パターン変数における「個別主義ー普遍主義」とは、「基準の適用基準に関する対立」です。主観的な基準で対応するか、一般的な基準で対応するかで決まります。前近代と近代をこのパターン変数で分析するのであれば、近代と対応するのは普遍主義です。従って、「近代化の過程で・・・普遍主義は衰退し」という記述は明らかに妥当ではないと考えられます。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
D.ベルは、財の生産からサービスに経済活動の重心が移行し、「知識階級」と呼ばれる専門・技術職層の役割が大きくなり、組織運営様式も諸要因を配慮する「社会学化様式」に変わっていく社会を、脱工業化社会と定式化しました。「インターネット技術によって情報化が高度に進んでいる状態のこと」ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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