公務員試験 H27年 国家一般職(行政) No.18解説

 問 題     

行政訴訟の類型に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア. 抗告訴訟は、行政事件訴訟法に規定される法定抗告訴訟のみに限定されず、いわゆる無名抗告訴訟 (法定外抗告訴訟) も許容されると解されていたが、平成 16 年に同法が改正されて、それまで無名抗告訴訟として想定されていた義務付け訴訟及び差止め訴訟が法定抗告訴訟とされたことに伴い、同法において、無名抗告訴訟が許容される余地はなくなったと一般に解されている。

イ. 無効等確認の訴えとは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟である。行政処分が無効である場合において、行政事件訴訟法は、行政処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えによることを原則とし、無効確認訴訟を提起できる場合を限定している。

ウ. 行政事件訴訟法は、行政事件訴訟を抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟の4類型に分けており、これらのうち、民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律の定める者に限り、提起することができるとしている。

エ. 当事者間で公法上の法律関係を争う訴えである当事者訴訟には、二つの類型がある。これらのうち、公法上の法律関係に関する訴訟は、対等当事者間の訴訟である点で民事訴訟と共通するが、公法私法二元論を前提として、民事訴訟と区別して行政事件訴訟の一類型として位置付けたものであり、形式的当事者訴訟と呼ばれる。

オ. 抗告訴訟のうち、処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えを併せて取消訴訟という。処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、原則として原処分を支持した裁決の取消しを求めて訴訟を提起することにより、当該裁決の取消しと併せて原処分の取消しを求めることとなる。

1. ア、イ
2. ア、オ
3. イ、ウ
4. ウ、エ
5. エ、オ

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

記述 ア ですが
H16 年行政事件訴訟法改正後も、抗告訴訟を法定されたものに限定する旨の定めがないことなどから、判例・学説の展開に応じ、無名抗告訴訟を許容する趣旨と一般に解されています。「許容される余地はなくなった」のでなく、妥当ではありません。記述 ア は誤りです。

記述 イ は妥当です。
無効等確認の訴えについての記述です。

記述 ウ は妥当です。
訴訟類型についての記述です。

記述 エ ですが
一文目は妥当です。当事者訴訟には、「形式的当事者訴訟」と「実質的当事者訴訟」の二つの類型があります。(行訴法 4 条)。「公法上の法律関係に関する訴訟」は「実質的当事者訴訟」です。記述 エ は誤りです。

記述 オ ですが
一文目は妥当です。「処分の取消しの訴え」と「裁決の取消しの訴え」を併せて「取消訴訟」といいます。(行訴法 9条1項)。二文目ですが、「懲戒処分と修正裁決」に関する判例(最判 S62.4.21) によれば、修正裁決により、当初から修正された内容の懲戒処分として存在していたとみなされます。従って、原処分の取消しを求める訴えを提起することになります。「当該裁決の取消しと併せて」ではありません。記述 オ は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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