公務員試験 H27年 国家一般職(行政) No.16解説

 問 題     

行政契約に関する ア~オ の記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア. 国の契約等を規律する会計法では、入札参加者を限定しないで競争入札を行い、予定価格の範囲内で国にとって最も有利な価格を提示した者を落札させる一般競争入札が原則となっていたが、不誠実な者が落札する場合が増加していることに鑑み、同法が改正され、現在では、不誠実な者を排除し、信頼性の高い者を選択することができることが長所とされる指名競争入札が原則となっている。

イ. 行政契約は、行政作用の一形態であるため、行政事件訴訟法上の「行政庁の公権力の行使」に当たると一般に解されている。このことから、行政契約に対して不服のある者は、民事訴訟ではなく、抗告訴訟で争うこととなる。

ウ. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律には、処分業者による事業の廃止、処理施設の廃止については、知事に対する届出で足りる旨が規定されているものの、処分業者が、公害防止協定において、協定の相手方に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、処分業者自身の自由な判断で行えることではなく、その結果、同法に基づく知事の許可が効力を有する期間内に事業や処理施設が廃止されることがあったときは、知事の専権に属する許可権限を制約することになり、同法に抵触するとするのが判例である。

エ. 行政契約には、基本的には民法の契約法理が適用されるが、その契約が私人間で一般的に用いられている売買契約であったとしても、契約自由の原則がそのまま貫徹されるわけではなく,平等原則等の行政法の一般原則が適用される。

オ. 行政契約は、契約や協定の当事者のみを拘束するのが原則であるが、建築基準法上の建築協定や、都市緑地法上の緑地協定等のように、私人間で協定を締結し、行政庁から認可を受けることにより、協定の当事者以外の第三者に対しても効果を持つものがある。

1. ア、エ
2. イ、オ
3. エ、オ
4. ア、イ、ウ
5. イ、ウ、オ

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

行政契約とは、行政主体と私人間の契約です。行政の活動を大きく「権力的手段」と「非権力的手段」に大別した時、後者に属します。原則として行政主体が、相手方と対等な立場で契約を行います。ただし、契約自由の原則は妥当せず、解除権が制限されるといった特徴を有します。代表例は、土木工事の請負契約などです。

記述 ア ですが
会計法第 29 条 の 三 第1項 によれば、原則が一般競争入札です。「指名競争入札が原則」ではありません。記述 ア は誤りです。

記述 イ ですが
行政契約は、行政作用の一形態ですが、非権力的手段です。「行政庁の公権力の行使に当たると一般に解されている」わけではありません。従って、不服があれば民事訴訟で争うことになると考えられます。記述 イ は誤りです。

記述 ウ ですが
最判 H21.7.10 によれば、処分業者が、公害防止協定において、協定の相手方に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、契約自由の原則、私法上の契約であることから、処分業者自身の自由な判断で行えることであると述べています。記述 ウ は誤りです。

記述 エ は妥当です。
行政契約についての記述です。

記述 オ は妥当です。
第三者効のある協定についての記述です。

以上より、正解は 3 です。

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