公務員試験 H26年 国家専門職(教養) No.37解説

 問 題     

人間と社会に関する思想についての記述として最も妥当なのはどれか。

1. 朱子は人間としての賢明な生き方とは世俗への執着心を捨て身を低くして人と争わず自然に従って生きることであると説いた。また政治についても君主は民衆に無用の干渉をせず自然に任せればかえってよく治まるとし小国寡民という村落共同体社会を理想とした。

2. 福沢諭吉によれば民権には民衆が自ら獲得した「恢復的民権」と為政者から与えられた「恩賜的民権」の2種類がある。そして日本の現状を考えればまず立憲政治を確立し「恩賜的民権」を次第に「恢復的民権」に育て上げることが進化の段階にかなっていると説いた。

3. 和辻哲郎は西洋近代の個人主義的人間観を批判し著書『人間の学としての倫理学』において,個人と社会のつながりを考察した。そして人間は孤立した個人的な存在ではなく人と人との関係の中で生きる「間柄的存在」であると考えた。

4. ルソーによれば人間は自然状態において自然権を無制限に行使しようとするため「万人の万人に対する戦い」が生じる。そこで各人が互いに社会契約を結んで各人の自然権を1人の人間あるいは一つの合議体に譲渡して全てを任せることで国家が成立すると説いた。

5. サルトルによれば自己の人生は「超越者」によってあらかじめ決められているがその責任は全て自分にある。それゆえに自分の内側を見つめ自分の存在とは何かについて考えることが大切であり社会との関わりは選択的に行っていくべきであると主張した。

 

 

 

 

 

正解 (3)

選択肢 1 ですが、記述は「老子」についてです。朱子ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが、「恢復的民権」、「恩賜的民権」は、中江兆民の造語です。福沢諭吉ではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は、妥当な記述です。

選択肢 4 ですが、「万人の万人による戦い」とは、ホッブズの著書「リヴァイアサン」で用いられた言葉です。ルソーによるものではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが、「超越者」と来たらヤスパースです。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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