問 題
次は、エリクソン (Erikson, E. H.) の発達理論における心理・社会的危機を図で表したものであり、図中A~Hには各発達段階における心理・社会的危機が入る。このうち C 又は F に関する説明として最も妥当なのはどれか。
1. Cにおいて、人は、自分自身で何かを操作することに興味を持つようになる。自分でできるこ
とが増え、自信や自己効力感を身に付けることで、外界に対して積極的に働き掛けられるように
なる。一方、うまくできないことや、自分はできないが他の人はできるということを通して、恥
や疑惑を経験することにもなる。
2. Cにおいて、人は、友人と一緒に勉強や作業をしたり、遊んだりすることを学ぶ。しかし、こ
れらの活動がうまくいかない場合や、友人と比べてうまくできない場合には、劣等感を持つこと
がある。劣等感とは本来、自分の力を精一杯出すための努力を促すものであるが、活動意欲を低
下させるものにもなりうる。
3. Cにおいて、人は、自発的に自己の行動の計画を立てたり目標を設けたりし、それを達成しよ
うと努力するようになる。しかし、いつも自分の計画や目標がうまく達成されるわけではなく、
それが社会的規範を犯すものであったり、危険性を伴うことであったりした場合には、大人に禁
止されるため、自己の計画、目標、方法を変更する必要が生じる。
4. Fにおいて、人は、認知能力の発達や対人関係の広がりを通じて自分自身に注意を向けるよう
になる。自我同一性の確立はこの時期に特有の課題であるが、これを達成するためには、自分が
何者であるかということをこれまでと異なる社会的な視野から捉えることが必要であり、達成に
失敗した場合には同一性拡散が見られる。
5. Fにおいて、人は、関心の中心を自分自身から家族や社会へと広げていき、自分を犠牲にして
でも子どもや家族、あるいは社会を守り、次の世代につなげていこうという思いを強くする。し
かし、このような関心が発達しないと、自分の所有物や健康など、自分自身のことだけに関心が
向けられるようになり、個人の発達は停滞することになる。
解 説
選択肢 1 は「自分自身で何かを操作することに興味」という記述から「自律性」が課題と読み取れます。これは幼児前期における課題です。心理社会的危機が恥・疑惑です。B に関する説明です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は「友人と一緒に勉強や作業」という記述から「生産性」が課題であり、学童期の記述とわかります。心理社会的危機が劣等感です。D に関する説明です。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当な記述です。
選択肢 4 ですが「自我同一性の確立がこの時期に特有の課題」とあるので、これは青年期で E に関する説明です。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は「次の世代につなげていこうという思い」という記述から、「生殖性(世代性)」が課題と読み取れます。心理社会的危機が停滞性です。G に関する説明です。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3 です。
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