公務員試験 H26年 法務省専門職員 No.13解説

 問 題     

知能研究の分野における CHC 理論に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. キャロル(Carroll, J. B.)とホーン(Horn, J. L.)の理論を基に キャッテル(Cattell, R. B.)が、過去の知能研究を再分析して提唱した理論であり、言語性知能と動作性知能が中核的な能力であるとされる。CHC 理論に基づいて作成された知能テストとして WPPSI がある。

2. 知能の因子分析的研究の集大成といえる理論であり、階層的な知能構造を仮定している。多数の限定的能力因子からなる階層の上に、認知的処理速度(Gs) 視空間能力(Gv) 流動性知能╱推論(Gf) 結晶性知能╱知識(Gc) などの広範的能力因子があると考えられている。

3. 旧来の知能理論は知識の把握・処理能力を過度に重視しているという批判を出発点として、知能をより幅広いものとして定義し直した理論である。知能は、共感性・社会性能力(Gs)、音楽的知能(Gm)、身体運動的知能(Gp)などを含む七つの因子から構成されると考えられており、多重知能理論とも呼ばれる。

4. 知能が高い人物の行動特徴について、一般人や知能研究の専門家にインタビューをした結果を基にして提唱された理論であり、素朴理論の一つである。この理論では、認知的知能、習慣的知能、社会的有能さの 3 因子から知能が構成されると考えられている。

5. 一般知能因子 g を提唱する立場と、それを否定する多因子説とを統合しようとする試みの中で生まれた理論であり、知能を階層構造によって捉えることが特徴である。分析的能力、実際的能力、創造的能力の 3 次元のバランスが重視され、これらの下位に 120 因子の能力が理論的に想定 されている。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
CHC 理論とは、キャッテルと弟子ホーンの理論(結晶性/流動性知能+他の知能)と、キャロルによる因子分析のメタ分析(最上層に g 因子を想定した 3 層構造)をまとめた理論です。「キャッテルが再分析して提唱」した理論ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

ちなみに
言語性/動作性 知能が中核 という記述は ウェクスラーによる知能の記述です。ウェクスラー式の中でも幼児用が WPPSI です。

選択肢 2 は妥当な記述です。

選択肢 3 ですが
多因子説(7因子)はサーストンによる理論です。CHC 理論ではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
CHC 理論は、素朴理論(経験則)の一つではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
記述はギルフォードの知能構造モデルです。CHC理論ではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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