公務員試験 H26年 法務省専門職員 No.12解説

 問 題     

ロールシャッハ・テストに関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. ロールシャッハ(Rorschach, H.)が 神経症患者を治療した臨床経験を基に作成した投影法心理検査である。今日では健常者を含めた幅広い対象者に用いられるようになっているが、当初は神経症患者の理解に特に有用とされ ロールシャッハ自身は健常者に対してテストを実施することはなかった。

2. 10枚の図版のうち 半分は無彩色 半分は有彩色の図版であり 色彩に対する反応を見ることで内向-外拡の性質が評価できる。無彩色図版に対する反応数が有彩色図版に対する反応数よりも多い場合が内向型であり、この特徴を持つ人は自己愛的になりやすく 神経症的で不安が高いと考えられている。

3. テスト実施場面では 被検査者が1枚の図版について反応を終えるごとに 検査者がその図版における反応について 明細化のための質問を行う。このとき 質問の仕方によっては被検査者の反応を歪めることがあるため、質問する際は被検査者の言葉をそのまま繰り返すなど 被検査者に与える影響を最小限にするよう注意する必要がある。

4. 結果の分析においては 反応領域、反応の決定因、反応の形態水準、反応内容などの分析に加え、 言語表現上の特徴も評価することにより、被検査者の思考様式や感情状態、対人関係、自己認知などを捉えることができると考えられている。

5. ロールシャッハ・テストの結果の解釈法は様々あるが、その一つに エクスナー(Exner, J. E.) が提唱した包括システムがある。その特徴として 他の解釈法と異なり客観的データによる量的な分析を重視し、反応の質的な評価や、図版内における反応の継起の評価を行わないことが挙げられる。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ロールシャッハ自身が健常者に対して実施することはなかった、という記述が明らかに誤りです。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
半分が無彩色、半分が有彩色という部分は妥当です。ロールシャッハテストでは、どのような特徴をとらえて答えを出したかという「反応決定因」を含めて反応を分類、記号化します。この決定因の一つが色彩反応です。これだけで「内向ー外拡」が評価できるわけではありません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
ロールシャッハテストは、図版全てに対して、まず自由反応段階を行います。すなわち、図版を1枚ずつ見て、何に見えるかを自由に話してもらう段階です。その後、話した反応について、何がどこになぜ見えたかといった質問段階を行います。「1枚見て反応を終えるごとに質問」するわけではありません。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当な記述です。

選択肢 5 ですが
ロールシャッハ・テストが、反応の分類、記号化 → 数値化により、量的解釈を可能にした、という点が重要です。従って、解釈法に違いがあっても「客観的データによる量的な分析」は重視されます。包括システムだけが「・・・量的な分析を重視し・・・」という記述は明らかに誤りと考えられます。ちなみに、包括システムの特徴は「反応時間を測らない」、「一定の反応数を求める」、「原則反応拒否はだめ」といった点があげられます。

以上より、正解は 4 です。

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