公務員試験 H26年 法務省専門職員 No.11解説

 問 題     

 タジフェル(Tajfel, H.)らが提唱した社会的アイデンティティ理論に関する記述として 最も妥当なのはどれか。

1. 社会的アイデンティティは 社会的カテゴリー化の過程によって内集団と外集団の区別を明確にし 、さらに 集団にとって重要な価値評価次元で内集団を外集団よりも肯定的に評価することによって達成されるとした。

2. 例えば実験場面などにおいて 便宜的・一時的にグループ分けされた集団であっても グルー プ分けに用いられた特徴の類似性や接触の頻度が手掛かりとなって 集団のメンバー相互に好意が生じることにより 集団カテゴリー化が起こるとした。

3. 社会的アイデンティティが十分に達成できないとき 人は 自分の属している現在の集団を去るか、現在の集団に属したまま いつまでもアイデンティティを確立できないモラトリアムの状況に居続けることになるとした。

4. 人の集団は それぞれの人が欲求を満足させるために相互に依存し合うことによって形成されるものであるという前提のもと、個人内あるいは対人関係に焦点を当てて 集団形成過程について説明した。

5. 内集団びいきが起こる要因の一つとして 内集団のメンバーには自分が恩恵を施す際のコストに対する報酬を期待できる一方、外集団のメンバーにはこうした期待が生じにくいことを指摘した。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当な記述です。

選択肢 2 ですが
「抽象的な2種類の絵の好み」という、便宜的・一時的 かつ、「メンバーに関して何の手がかりも得られないグループ分け」であっても、内集団びいきが生じるという結果でした。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
社会的アイデンティティ未達成 → モラトリアムに居続ける という流れは明らかに誤りです。「モラトリアム状態」とは、エリクソンの定義したアイデンティティに基づき、「危機の最中、積極的関与中」の状態のことです。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
一般的に、より望ましい自己評価を得ようとするという前提から、内集団と外集団の境界の明確化、内集団びいきなどが引き起こされると考えました。「それぞれの人の相互依存」が前提という記述は誤りと考えら得れます。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
便宜的・一時的 かつ、「メンバーに関して何の手がかりも得られないグループ分け」であっても、内集団びいきが生じるという結果でした。従って、内集団のメンバーの方がコストに対し報酬が期待できる、ということが理由ではないと考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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