公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.65解説

 問 題     

心理療法に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1. 自律訓練法とは、心身安定のための心理生理学的訓練法の一つである。行動療法が基盤となっており、「標準練習」、「黙想練習」、「特殊練習」などから成り立っている。全般に手続が明確で簡便であり、乳幼児を除いて幅広い年齢層に適用できるほか、陽性症状の見られる統合失調症の患者や重度の抑うつ病患者の治療にも効果的とされている。

2. 内観療法は、過去の対人関係における自己の態度や行動を多面的・客観的に調べることにより,真実の自己を発見するための技法である。内観は1か月間集中的に実施するものとされ、「絶対臥褥期」、「軽作業期」など五つの段階を通して、親など身近な存在との関わりを「世話になったこと」、「迷惑を掛けたこと」などのテーマに沿って繰り返し思い出していく。

3. ゲシュタルト療法では、治療プロセスは問題指向的で構造化されており、状況を認識する過程を表層と深層の二つのレベルに分けて分析する。全体としてまとまりある人格への統合を図ることが治療の目標であり、セラピストは治療初期に問題リストを作成した後、「ホット・シート」や「ロール・プレイング」などの技法を用いて介入していく。

4. 交流分析では、基本的に「構造分析」、「ゲーム分析」など四つの分析を行う。例えば構造分析では、人は誰でも心の中に「親・大人・子」という三つの自我状態があり、各個人により、また状況によって、優位となる自我状態が異なると考え分析していく。交流分析の基本的な立場としては,無意識の存在を仮定せず、「今ここで」を重視する。

5. サイコドラマとは、対人行動の障害やつまづきを学習性の行動の欠如として捉え、ドラマを演じさせることを通して、効果的な対人行動の獲得を援助していく認知行動療法である。治療はあらかじめ定められた手順に沿って進められる。参加者には一定以上の自発性や表現力が必要とされるため、精神障害患者への適用は不向きとされている。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
前半は妥当です。自律訓練法についての記述です。後半ですが、心身の様々な変化が副作用として生じることもあるため、心臓に異常があったり、重度の抑うつ患者などに積極的に用いることはありません。選択肢 1 は妥当ではありません。

選択肢 2 ですが
内観療法には、1週間を基本とする「集中内観」と、日常生活のなかで継続的に短時間ずつ行なう「日常内観」とがあります。自分の身近な人々との関係を、1.世話になったこと、2.世話をして返したこと、3.迷惑をかけたことの 3 点に絞り想起します。「・・・「軽作業期」など・・・を通して」というものではありません。選択肢 2 は誤りです。ちなみに、「絶対臥褥期」、「軽作業期」など『4つ』の段階を通して行うのは、森田療法です。

選択肢 3 ですが
ゲシュタルトとは「統合」を意味します。「思考・感情(精神)と、身体の統合」を目指し、「今、ここ」に注目した心理療法です。「まとまりのある人格への統合」を図るものではありません。選択肢 3 は誤りです。

ちなみに、代表的な手法がホットシートです。向かい合った椅子を用意し、自分が座っている方がホットシートです。向かい合う椅子は誰も座っておらず、エンプティ・チェアと呼ばれます。そこに人がいるとして、話しかけることで、抑圧された感情・不満・欲求の解放を図ります。

選択肢 4 は妥当です。
交流分析についての記述です。

選択肢 5 ですが
サイコドラマ(心理劇)は、即興劇を用いた集団療法の一つです。モレノが考案しました。自分や他者についての受容、気づきを促すことが目的です。即興劇であり、「あらかじめ定められた手順に沿って進められる」という記述は妥当ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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