公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.56解説

 問 題     

社会における諸問題に関連する用語についての記述として最も妥当なのはどれか。

1. ホッブズ問題とは、大国どうしが深刻な対立に陥り、世界全体の秩序が不安定な状態のまま継続している状態をいい、この概念を提唱したT.パーソンズは、各国の有する主権を一部移譲した強力な国際機関を設立することが、この問題の解決に最も効果的であるとした。

2. エスノセントリズムとは、それぞれの民族集団が自律的に意思決定できる状態を理想とする政治思想のことであり、民族紛争が重大な国際問題となっている現在において、その思想の意義は世界的に高まっているとされる。

3. 高齢化社会とは、65 歳以上人口が総人口に占める割合である高齢化率が7~14% の社会であり、高齢社会とは、高齢化率が14% を超えた社会を指す。我が国の高齢化率は、2012 (平成24) 年において高齢化社会の水準にある。

4. 予言の自己成就とは、将来のことについて予言をすることで、予言がなければそうならなかったかもしれないことが、実際にその予言どおりになることをいい、R.K.マートンは支払不能の噂によって実際に支払不能になった銀行の事例などを挙げ、これを定式化した。

5. リスク社会とは、中世や近代における伝染病の流行や戦争などのように、生命を危険にさらす次元にまでリスクが達した社会のことをいい、U.ベックは、科学技術の進歩が停滞すると現代社会は再びリスク社会に戻る可能性があるとした。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ホッブズ問題とは、ホッブズが提唱した「自然状態=万人の万人に対する戦争であり、自然状態の戦争がどこまでも続けば、人類はついには滅びる。何らかの人為的方法によって戦争をやめさせ、秩序をつくるにはどうするか」という問題です。「大国どうしが・・・対立」という問題ではありません。

パーソンズは、前提としての「目的のランダム性」に注目し、社会現象は決して完全にランダムではなく、むしろ資源が稀少なのに、一定程度の安定性が出現していることを説明することこそが、解かれるべき問題である、と考えました。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
エスノセントリズムとは、自民族中心主義、自文化中心主義のことです。ウィリアム・サムナーの造語です。自分の育ったエスニック集団や文化を基準とし、他の集団や文化を低く評価する態度や思想です。「それぞれの民族集団が自律的に意思決定できる状態を理想とする政治思想」ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
高齢化社会は 高齢化率 7% 以上、高齢社会は 高齢化率 14_% 以上です。日本の高齢化率は H24 年時点で 25% 弱です。「高齢化社会の水準」ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
マートンの予言の自己成就です。

選択肢 5 ですが
U.ベックは「リスク社会」(邦訳:危険社会)などの著書で「現代社会=コントロール困難、不可視的、複雑な影響をもたらすリスクが増大しつつある社会」と主張しました。「科学技術が停滞すると、再びリスク社会に戻る」というわけではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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