公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.55解説

 問 題     

東南アジア諸国に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1. タイと我が国は、タイが交易の拠点として発展したアユタヤ朝の時代に日本人町が形成されていたなど、1887 年に修好宣言がなされる以前からも長い交流の歴史を持つ。現在も我が国とは経済面等で緊密な関係となっており、2007 年には貿易のみならず投資、政府調達等幅広い分野における経済関係の強化を目指す日タイ経済連携協定が発効したほか、2012 年の外国からのタイ向け直接投資における我が国の投資額の割合は、タイに対する直接投資額全体の半分以上を占めた。

2. インドネシアでは独立以降スハルト大統領による権威主義的な統治が行われていたが、1998 年にスハルト体制が崩壊すると、アチェやパプワで分離運動が活発化した。パプワでは 1999 年に独立の是非を問うために行われた住民投票の結果に反対する民兵組織の破壊行為により治安状態が極めて悪化したため、国連は国連平和維持活動を開始し、以降2013年現在まで我が国も国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律に基づき自衛隊施設部隊を派遣する等の支援業務を行っている。

3. シンガポールは 1965 年にマレーシアより分離独立して以来、人民行動党が議会の全議席を維持する一党支配が続いており、この安定した政治基盤をもとに外資導入を軸とした工業化を推進したことで高度成長を達成した。また同国は二国間の経済連携協定 (EPA) 等の締結を重視しており、2006 年に米国が中心となって交渉が開始された環太平洋パートナーシップ協定 (TPP) については当初交渉参加を見送っていたものの、2012 年から交渉に参加することとなった。

4. フィリピン南部のミンダナオ地域はスペインによる植民地支配下で圧迫されたムスリム諸部族の主な居住地域となった経緯から、現在も住民の約8割がイスラム教徒で、モロ・イスラム解放戦線 (MILF) などのイスラム系反政府勢力が活動している。2010 年に大統領に就任した B.アキノ大統領は同勢力を掃討すべく2012年にミンダナオへ国軍を投じたことから、G.アロヨ前政権から継続していた MILF との停戦交渉は中断された。

5. マレーシアはマレー系や中国系、インド系などで構成される多民族国家であるが、1969 年に生じた民族暴動以降、経済的・社会的立場を引き上げるために中国系・インド系民族を様々な面で優遇するブミプトラ政策が実施されている。しかし、同政策による民族間での経済格差の拡大が社会問題となっており、2008 年に実施された総選挙では独立以来一貫して政権を担当していた統一マレー国民組織が敗北し、野党連合の首班であったアンワルが首相に就任した。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

選択肢 1 は妥当です。
タイと日本の関係についての記述です。

選択肢 2 ですが
パプワについて、国連平和維持活動は行われていません。日本からも部隊派遣等は行われていません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
シンガポールについて、人民行動党が「全議席」を維持しているわけではありません。分離独立して以来、一貫して与党です。また、シンガポールは TPP の原加盟国4つのうちの1つです。(残りはチリ、ニュージーランド、ブルネイ)。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
現在のミンダナオ島は、住民の大多数がキリスト教です。また、2011 年に、日本政府仲介のもと、アキノ大統領と MILF 最高指揮者の極秘会談が初めて行われるなどの経緯を経て、2012 年に、ミンダナオ和平に関する「枠組み合意」が署名されました。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
「ブミプトラ」とは、サンスクリット語から移入された語彙で「土地の子」という意味です。ブミプトラ政策は「地元民であるマレー人優遇政策」のことです。「中国系・インド系民族優遇」ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1 です。

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