公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.54解説

 問 題     

地球環境問題をめぐる国際協力に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。

1. 酸性雨は、その原因物質の発生源から数千キロ離れた地域にも沈着する性質があり、国境を越えた広域的な現象であるが、特に、ヨーロッパにおいては、湖沼や森林等の生態系、遺跡・建造物等への影響が顕在化していたために、1992 年には「長距離越境大気汚染条約」が採択されるなど積極的な対策が講じられてきた。東アジアにおいても、我が国のイニシアティブで「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク」の構築が提唱されたが、2003 年以降の日中韓関係の悪化によって構築されることはなかった。

2. 遺伝子、種、生態系など生物の多様性の保全、その持続可能な利用、利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分を目的とする「生物多様性条約」は、1992 年の地球サミット (国連環境開発会議) で採択され、翌年に発効した。しかし、米国は、バイオテクノロジーを利用した開発により知的財産権を取得することを妨げられることを恐れて、同年は同条約を批准しなかった。ところが、2010 年に名古屋で開催された同条約第 10 回締約国会議 (COP10) において、遺伝資源のアクセスと利益配分に関する議定書が採択されたことをきっかけに、同年米国は同条約を批准した。

3. 1992 年の地球サミットでは「気候変動枠組条約」が採択され、1997 年に開催された同条約第3回締約国会議 (COP3) では「京都議定書」が採択された。地球サミットでは「アジェンダ21」も採択され、その中では、熱帯林、温帯林、北方林を含む全ての種類の森林の多様な役割・機能の維持などの必要性が主張されていた。「京都議定書」では、温室効果ガス排出量を削減するための対策の一つとして、森林等による吸収量の拡大を促進することを承認することが検討されたが、気候変動対策としては承認されなかった。

4. 人の健康及び環境にとって有害な化学物質は、その製造や使用、廃棄の過程で国境を越えて取引され、また大気や水といった環境中に放出されることによって、地球規模での環境汚染を引き起こすおそれがある。有害な化学物質・廃棄物に関連する三つの条約 (バーゼル条約、ロッテルダム条約、ストックホルム条約) の締約国会議 (COP) は、従前別々に開催されてきたが、2011 年に開催された各条約のCOP では3条約の協働体制の構築と協力の促進を更に進めることとされ,2013 年に3条約の第2回拡大合同 COP が開催された。

5. 国連環境計画 (UNEP) は、2001 年に地球規模の水銀汚染にかかる活動を開始し、翌年には人への影響や汚染実態をまとめた報告書を公表した。その後、2010 年から、水銀に関する条約の制定に向けた政府間交渉が開催された。しかし、この条約は、我が国で発生した水俣病への明確な反省の上に立って制定されるものであるために、我が国は政府間交渉から離脱して、水銀に関する条約へは調印しないことを決定した。

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説     

選択肢 1 ですが
「長距離越境大気汚染条約」はジュネーブ条約とも呼ばれ、1979 年に採択されました。「1992 年」ではありません。また、「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク」は、日本のイニシアチブの下で、2001 年 1 月から本格稼働し、2020 年 4 月現在 13 カ国が加盟しています。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
生物多様性条約は、米国が批准していません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
京都議定書において、森林等による二酸化炭素吸収量を、温室効果ガスの排出削減目標達成の手段として組み入れることを限定的に認めました。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
COP についての記述です。

選択肢 5 ですが
水銀に関する条約は、2013年からは日本国政府が主導した、一定量以上の水銀を使った製品の取り引きなどを国際的に規制する目的で採択させた条約です。名称を「水銀に関する水俣条約」と、日本政府代表が提案しました。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 4 です。

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