公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.18解説

 問 題     

取消訴訟以外の抗告訴訟に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

ア. 無効等確認訴訟の対象となる行政庁の処分又は裁決は、その効果を否定するにつき取消訴訟の排他的管轄に服さないほど瑕疵が重大明白なものであることから、当該処分又は裁決に不服のある者は、当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有するか否かにかかわらず、無効等確認訴訟を提起することができるとするのが判例である。

イ. 行政事件訴訟法は、不作為の違法確認訴訟の原告適格を「処分又は裁決についての申請をした者」と定めている。ここにいう「申請」とは、手続上適法な申請を指し、法令に基づく申請をした者であっても、その申請が手続上不適法であるときは、その者は不作為の違法確認訴訟を提起することができない。

ウ. 法令に基づく申請に対する不作為についての義務付け訴訟は、当該申請に対する処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるために他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。

エ. 一定の処分を求める義務付け訴訟の本案判決前における仮の救済として、裁判所が仮の義務付け決定をした場合、行政庁が仮に処分をすべきことになるのであって、裁判所自身が仮の処分をするものではない。

オ. 差止めの訴えの訴訟要件として行政事件訴訟法が定める「重大な損害が生ずるおそれ」があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟又は無効確認訴訟を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要するとするのが判例である。

1. アウ
2. アオ
3. イウ
4. イエ
5. エオ

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

記述 ア ですが
行訴法 36 条によれば、「無効等確認の訴えは、・・・法律上の利益を有する者で・・・現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。」とあります。法律上の利益が必要です。「法律上の利益を有するか否かにかかわらず」ではありません。記述 ア は誤りです。

記述 イ ですが
不作為の違法確認訴訟の原告適格にいう「申請した者」とは、現実に申請した者であればよいです。申請が手続き上不適法であっても、行政には却下という応答を行う法的義務があります。従って、不作為の違法を争う必要性が認められるからです。「申請が手続き上不適法であるときは・・・提起することができない」わけではありません。記述 イ は誤りです。

記述 ウ ですが
重大な損害を生じるおそれ、かつ、適当な方法が他にない場合に提起できるのは「処分の不作為」に対する義務付け訴訟です。(行訴法3条6項『1号』)。

「法令に基づく申請に対する不作為」は、行訴法3条6項『2号』に該当します。こちらの訴訟要件は、期間内に処分又は裁決がされない or 却下、棄却された場合において、取り消されるべきもの 又は 無効 若しくは 不存在 であることです。記述 ウ は誤りです。

記述 エ は妥当です。
裁判所による仮の義務付け決定についての記述です。

記述 オ は妥当です。
差止めの訴えの訴訟要件に関する、行訴法37条の4「重大な損害が生ずるおそれ」について、教職員国旗国家訴訟(最判 H24.2.9)の判例の通りです。

以上より、正解は 5 です。

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