公務員試験 H29年 国家一般職(教養) No.38解説

 問 題     

日本国憲法の基本的人権に関する記述として最も妥当なのはどれか。

1.憲法は,全て国民は法の下に平等であって,人種,信条,年齢,社会的身分又は門地により,政治的,経済的又は社会的関係において差別されないと定めている。一方,男女の体力的な差に配慮して異なる取扱いをすることはむしろ合理的であることから,男女で異なる定年年齢を企業が就業規則で定めることには合理的な理由があり,憲法には反しない。

2.教育を受ける権利を保障するため,憲法は,全て国民はその能力や環境に応じて等しく教育を受ける権利を有することや,その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負うことを定めている。また,憲法は,後期中等教育を修了するまでの間,授業料や教科書等に係る費用を無償とすると定めている。

3.経済の自由として,憲法は,財産権の不可侵や居住・移転の自由,職業選択の自由,勤労の権利等を保障している。経済の自由は,近代憲法が人々の経済活動を国家による介入から守るために保障してきたという伝統に基づいており,公共の福祉による制限は認められておらず,社会権やその他の新しい権利とは異なっている。

4.刑事手続に関し,憲法は,被疑者や被告人の権利を守るため,令状主義,黙秘権,取調べの公開,弁護人依頼権など詳細な規定を設けている。しかし,殺人等の重大な事件については,裁判に慎重を期す必要があるため,有罪又は無罪の判決が確定した後でも,必要な場合には,同一事件について再び裁判を行うことができる。

5.プライバシーの権利は,憲法に明文の規定はないが,幸福追求権を根拠に保障されていると考えられている。プライバシーの権利については,私生活をみだりに公開されない権利などとされてきたが,情報化社会の進展等に伴い,自己に関する情報をコントロールする権利としても考えられるようになってきている。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

選択肢 1 ですが、異なる定年年齢を就業規則で定めるのは、性別のみによる不合理な差別です。(日産自動車事件の判例より)よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが、憲法 26 条 2 項には、教科書まで無料と定めているとは読み取れません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが、公共の福祉による制限は認められます。よって、選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが、憲法 39 条より、一事不再理です。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 は、妥当な記述です。

以上より、正解は 5 です。

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