公務員試験 H26年 国家一般職(化学) No.27解説

 問 題     

図は室温で測定したアントラセン(シクロヘキサン溶液)の蛍光スペクトルである。このスペクトルに関する記述ア~エのうちから,妥当なもののみを全て選び出しているのはどれか。

ア このスペクトルの測定時の励起光の波長は,380nm より短波長である。

イ このスペクトルにみられる複数のピークは、電子励起状態の複数の振動準位から電子基底状態の最低振動準位への遷移に由来する。

ウ 試料溶液の温度を高くするとこの蛍光スペクトルの強度は増大する。

エ 試料溶液に酸素が溶存するとこの蛍光スペクトルの強度は減少する。

1. ア イ ウ
2. ア ウ
3. ア エ
4. イ ウ エ
5. イ エ

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

記述 ア は、正しい選択肢です。蛍光発光の原理を簡単に言えば、1:励起光(エネルギー、より大)を当てて、分子中の電子を励起、2:電子が安定状態へ。→エネルギー損失を、蛍光(エネルギーは、励起光よりも小)の放出として観察。となります。そして、「エネルギーが大きい = 波長が短い」 となります。

以上より、蛍光よりも、励起光の方が高エネルギーである。=蛍光の波長よりも、励起光の方が波長が短い。→グラフと合わせれば、励起光の波長は、380 よりも短波長 です。

記述 イ ですが、例えば、電子の取りうるエネルギー状態として、エネルギーの低い方から「基底状態(励起光を吸収する前)」、「励起1」、「励起2」があったとします。

励起光を受け取った電子が励起1のエネルギーや、励起2のエネルギーを持ちます。そこからエネルギーを失うのですが、記述 イ では「励起1→基底状態」や「励起2→基底状態」 に伴う蛍光しかないということになります。しかし「励起2→励起1」という過程においてもエネルギー損失に伴い蛍光は見られます。従って、記述イ は誤りです。

記述 ウ、エ ですが、蛍光を測定する際には、溶存酸素、温度(高温)、濃度(高濃度)、不純物 などによる蛍光強度の減少に注意する必要があります。高温の場合、強度は「減少」するので、記述 ウ は誤りです。記述 エ は、正しい記述です。
 
以上より、正解は 3 です。

コメント