公務員試験 2020年 国家一般職(行政) No.65解説

 問 題     

マスメディアによる影響に関するA~Dの記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。

A.選挙の直前に,政治家がある施設を訪れ,子供を激励したという話が報道されることがある。このとき,政治家としての資質を判断する上で,それが些さ末まつな情報だとしても,受け手はそれを思い出しやすいため,判断がそれに影響される傾向がある。このように,マスメディアによる情報提供を受けて,多くの人が同じような情報にアクセスしやすくなるため,その情報が受け手の判断を方向付けるという現象のことをスリーパー効果と呼ぶ。

B.ドラマのようなフィクションでは,殺人や犯罪,愛憎や権力闘争といったテーマが頻繁に描かれている。そうしたドラマを見続けても,人々はそれをフィクションであると分かっているので,社会は危険にあふれているといった考えをもつことはない。むしろふだんの生活との対比から,社会は平和であると思いやすい。こうした現象を説明する理論に培養理論がある。

C.ある地域の有権者を対象とした研究では,選挙の際にマスメディアが強調していた争点の順位と,有権者が重視していた争点の順位とを比較したところ,高い正の相関が見られた。このように,マスメディアによって,ある話題や争点が繰り返し報道されたり強調されたりすることで,受け手が実際にその話題や争点を重要なものと認知する現象を議題設定効果と呼ぶ。

D.選挙予測や流行等についてマスメディアで情報が伝えられることで,優勢と伝えられる候補者への支持率が高まったり,流行が更に多くの人に取り入れられたりすることがある。このように,それまで支持する候補者がいなかったり流行を取り入れていなかったりする人が,世の中の多くの人と同じ選択をするという現象を外集団均質化効果と呼ぶ。

1.A
2.C
3.A,B
4.B,D
5.C,D

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

記述 A ですが
信憑性の低い送り手からのメッセージであっても,ある程度の時間が経過して送り手の印象が薄れると,内容次第で説得効果が効いてくることがあります。後になってじわじわと現れてくる効果が,スリーパー効果です。(H28no65)。記述 A は誤りです。

記述 B ですが
ガーブナーらは、長期に渡りテレビを長時間見ることが、ある一定の価値観を身につけることにつながると考えました。これが培養理論です。(H28no65)。「ドラマを見続けても,人々はそれをフィクションであると分かっているので,社会は危険にあふれているといった考えをもつことはない」という理論ではありません。記述 B は誤りです。

記述 C は妥当です。
議題設定効果についての記述です。(H28no65)。

記述 D ですが
外集団均質化効果とは、自分の所属する集団に比べて、他の集団の同質性を高いものとみなすバイアスです。中のいい友人達が非常に個性的と感じるのに比べ、他の友人グループが無個性な人間の集まりに感じるといったバイアスです。記述の内容は「バンドワゴン効果」と考えられます。(H27no57)。ちなみに、自分の所属する集団(内集団)に対しては、ひいき目になる内集団バイアスがあります。記述 D は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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