公務員試験 H30年 国家一般職(行政) No.51解説

 問 題     

安全保障政策に関する次の記述のうち,妥当なのはどれか。

1.相互確証破壊(MAD)とは,冷戦中に核開発競争を進めたインドとパキスタンが,相互に相手を壊滅することができる程度の核兵器を保持し,「恐怖の均衡」としての核抑止を働かせていた状態である。

2.「封じ込め」政策とは,二つの陣営の対立が世界規模で広がっていた第二次世界大戦時に,自由主義陣営の盟主である米国が,ソビエト連邦などの共産主義諸国の勢力の拡大を抑え込むために採っていた政策である。

3.「囚人のジレンマ」とは,安全保障政策におけるモデルにも応用されるゲーム理論の一つである。そこでは,二人の潜在的仲間が,相互信頼が欠けているために互いに協調することができず,両者にとっての最適の解が容易に得られない状態である。

4.東南アジアでは,米国主導により,国際連合憲章第51 条の集団的自衛権を根拠にして,共同防衛体制のための地域機構である東南アジア条約機構(SEATO)が設置されている。これは,米国を中心とする地域的な安全保障の仕組みであり,ハブ・アンド・スポークスと呼ばれる。

5.集団安全保障は,国連憲章に採り入れられている考え方で,平和の破壊者等に対して各国が集団的に制裁を加えていく仕組みである。安全保障理事会における常任理事国の拒否権行使にかかわらず3 分の2 以上の理事国の賛成による決定に基づき,国連憲章第42 条の軍事的強制措置を採ることもできる。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説     

選択肢 1 ですが
相互確証破壊とは、両者核兵器保有 かつ 先制攻撃を受けても核攻撃能力が生き残る という要件が成立した状況のことです。こうなると、先に核攻撃を行った国も相手の核兵器によって甚大な被害を受けることになります。そのため、相互確証破壊が成立した2国間において、軍事衝突は理論上発生しません。冷戦後期における米ソ間が、相互確証破壊が成立した代表例です。インドとパキスタンに関しては、本試験時点で成立していないとされています。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
「封じ込め」政策は、アメリカ冷戦期における 対ソ連東欧圏基本政策です。第二次世界大戦時の政策ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
「囚人のジレンマ」に関する記述です。

選択肢 4 ですが
ハブ・アンド・スポークとは、大規模拠点(ハブ)と、各拠点(スポークス)というネットワークの事です。東南アジアの安全保障に関して、ハブが米国です。SEATO のような地域機構は、ハブ・アンド・スポークではありません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
前半は妥当です。後半ですが、安全保障理事会による拒否権が行使されれば、措置は採れません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

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