公務員試験 H28年 国家一般職(行政) No.25解説

 問 題     

法定地上権に関する ア〜オ の記述のうち,妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし,争いのあるものは判例の見解による。

ア.法定地上権は,公益上の理由に基づき,法律上当然に発生するものであるから,第三者に対し登記なくして法定地上権を対抗することができる。

イ.土地及び地上建物の所有者が,建物の取得原因である譲受けにつき所有権移転登記を経由しないまま土地に対し抵当権を設定し,その抵当権が実行された場合,法定地上権は成立しない。

ウ.土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が設定された後,甲抵当権が設定契約の解除により消滅し,その後,乙抵当権の実行により土地及び地上建物の所有者を異にするに至った場合において,当該土地及び地上建物が,乙抵当権の設定当時に同一の所有者に属していたとしても,甲抵当権の設定当時に同一の所有者に属していなければ,法定地上権は成立しない。

エ.所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後,当該建物が取り壊され,当該土地上に新たに建物が建築された場合には,新建物の所有者が土地の所有者と同一であり,かつ,新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたときなど特段の事情のない限り,新建物のために法定地上権は成立しない。

オ.建物の共有者の一人がその敷地を単独で所有する場合において,当該土地に設定された抵当権が実行され,第三者がこれを競落したときは,当該土地につき,建物共有者全員のために,法定地上権が成立する。

1.ア,イ
2.ア,エ
3.イ,ウ
4.ウ,オ
5.エ,オ

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

記述 ア ですが
法定地上権も地上権の一種です。そして、地上権は物権の一つです。不動産に関する物権なので、民法 177 条により、第三者に対抗するためには原則として、登記が必要です。記述 ア は誤りです。ちなみに、建物所有目的の地上権について、特殊な例外ルールがあります。建物所有者の登記があれば対抗力を有します。(借地借家法10条)。

記述 イ ですが
法定地上権が成立するポイントは、1:抵当権設定当初、土地上に建物あり、更地ではない、2:抵当権設定当初、土地と建物の所有権が同じ です。(参考 H26no24)。ポイントをみたしており、法定地上権は成立します。もしこの事例で法定地上権が成立しなかったとしたら、所有者の登記忘れにより、建物の利用ができなくなり、建物収去・土地引渡ししなければならない、という酷な結果になってしまいます。これは不合理と感じるのではないでしょうか。記述 イ は誤りです。

記述 ウ ですが
法定地上権が成立するポイントは、1:抵当権設定当初、土地上に建物あり、更地ではない、2:抵当権設定当初、土地と建物の所有権が同じ です。従って、乙抵当権の設定当時に同一の所有者に属していたのであれば法定地上権は成立すると考えられます。記述 ウ は誤りです。

記述 エ は妥当です。
最判 H9.2.14 です。(H26no24)。

記述 オ は妥当です。
最判 S46.12.21 です。「建物共有者のひとりが敷地を所有する場合、自分に加え、他の建物共有者にも敷地利用を認めているから」と判示しています。

以上より、正解は 5 です。

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