公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.24解説

 問 題     

法定地上権に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。

ア. 法定地上権は、合意ではなく法律の規定によって成立する物権であるから、第三者に対して対抗するために対抗要件を備える必要はない。

イ. 土地に対する抵当権設定時、その土地上に建物が存在しない場合、抵当権者が、抵当権設定時にその土地を更地として評価して抵当権の設定を受けているものの、その土地上に抵当権設定者所有の建物が建てられることをあらかじめ承認していれば、その後その土地上に抵当権設定者所有の建物が建てられたときは、その建物のために法定地上権が成立する。

ウ. 土地に対する抵当権設定時、その土地上に抵当権設定者の建物が存在している場合、その後その建物が滅失し抵当権設定者所有の新建物が再築されたときは、再築された新建物のために再築前の旧建物を基準とする法定地上権が成立する。

エ. 抵当権設定者所有の土地及び土地上の建物について共同抵当権設定後、その建物が滅失し抵当権設定者所有の新建物が再築された場合、抵当権者が、再築された新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたときであっても、再築された新建物のために法定地上権は成立しない。

オ. 土地に対する抵当権設定後、その土地上に第三者所有の建物が建てられた場合、その第三者が抵当権者に対してその土地の占有について対抗することができる権利を有していないときは,抵当権者は、その土地と共にその第三者所有の建物を競売することができる。

1. ア、イ
2. ア、オ
3. イ、エ
4. ウ、エ
5. ウ、オ

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

地上権は「土地上の建物所有者が、土地を利用する権利」です。そして、法定地上権とは、土地、建物を同一人物が所有しているケースにおいて、土地か建物に抵当権設定後、抵当権実行、競売を経て土地と建物の所有者が異なった場合に、地上権設定とみなすという規定が「法定地上権」です。

法定地上権が成立するポイントは
1:抵当権設定当初、土地上に建物あり、更地ではない
2:抵当権設定当初、土地と建物の所有権が同じ です。

記述 ア ですが
前半は妥当です。法定地上権は、法律の規定により成立する物権の一種です。後半ですが、地上権は第三者への対抗要件として登記が必要です。記述 ア は誤りです。

記述 イ ですが
抵当権設定時、土地が更地である場合、たとえ抵当権者が抵当権設定後に地上建物が建築されることを承認したときであっても、法定地上権は成立しません。(最判 S36.2.10)。記述 イ は誤りです。

記述 ウ は妥当です。
土地を差し押さえた時建物が存在し、その後に土地の上の建物が滅失(取壊し、焼失等)して再築された場合でも、法定地上権は成立します。(大判 S10.8.10、最判 S52.10.11)。

記述 エ ですが
最判平9.2.14 によれば、共同抵当権設定後、建物滅失のケースでは「新しい建物の所有者が土地と同一かつ、新しい建物について土地と同順位の共同抵当権設定を受けた」といった特段の事情がない限り、法定地上権は成立しないとあります。記述はまさにこの「特段の事情」にあてはまります。従って、法定地上権は成立します。記述 エ は誤りです。

記述 オ は妥当です。
抵当地の上の建物の競売について、民法第 389 条の通りです。

以上より、正解は 5 です。 

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