公務員試験 H26年 国家一般職(行政) No.64解説

 問 題     

次は、情動に関するある実験についての記述であるが、この実験によって検討された心理学理論として最も妥当なのはどれか。

<実験概要>
実験参加者は男子大学生であった。約半数の実験参加者は自転車漕ぎを、残りの参加者は縫製作業を行うよう指示された。この課題遂行の直後、実験者が依頼した実験協力者 (サクラ) が、実験参加者に対して不快な挑発的行為を行った。その後、実験参加者にサクラに報復する機会を与えると,自転車漕ぎを行った実験参加者は、縫製作業をしただけで自転車漕ぎ (激しい運動) を行っていない実験参加者と比較して、サクラに対してより攻撃的に振る舞うことが見いだされた。

1. D.J.ベムの自己知覚理論(self-perception theory)

2. D.ジルマンの興奮転移理論(excitation transfer theory)

3. F.ハイダーの認知的均衡理論(cognitive balance theory)

4. H.S.ベッカーのラベリング理論(labeling theory)

5. J.W.ブレームの心理的リアクタンス理論(psychological reactance theory)

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説     

選択肢 1 ですが
ベムの自己知覚理論とは、「人は自分の行動と行動が起こった状況などを観察することで、自分の態度や内的状態を推論する」という理論です。実験参加者が自分の行動や状況を観察し、態度や内的状況を推論しているような実験とは考えられません。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。
「先行状況における興奮が、関係のない後続状況での情動反応を高める方向に、持続的影響を及ぼす」という理論です。自転車漕ぎにおける興奮が、サクラへの報復機会に影響しているかという検討が行われたと考えられます。

選択肢 3 ですが
ハイダーの認知的均衡理論とは、自分、他者、対象について、2者間の好きを+、嫌いを-と考える理論です。そして、自分ー他者、自分ー対象、他者ー対象の符合を考えて積をとった時、符合がマイナスの場合を不均衡とします。不均衡の場合、行動変容により、符合の積を+として均衡をとろうとします。本実験とは関連しないと考えられます。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
ベッカーのラベリング理論とは、「犯すと逸脱」となる規則が周囲から適用されて、アウトサイダーであるというラベリングが行われることにより逸脱が生み出されるという考え方です。規則の適用といった内容は見られません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ブレームの心理的リアクタンス理論とは、「人は自分の行動や選択を決めたいと考えており、行動や選択の自由を制限された時に、心理的抵抗感、反発の気持ちを有する」という理論です。特に自由が制限されていません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

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