問 題
群集・公衆・大衆等に関する学説についての記述として最も妥当なのはどれか。
1. G.ル・ボンは、群集とは特定の事柄への関心のもとに一時的に集まった対面的な人間集合であり、合理的な意思決定の手続に従い、冷静に世論を形成する主体であるとした。
2. G.タルドは、公衆とはメディアを通じて間接的に接触し合う非対面的な人々の集まりであり,非合理的に情動を噴出させる傾向があるとした。
3. M.ホルクハイマーは、マルクス主義に基づく批判理論を過度に理念主義的であるとして、より実証主義的な研究の推進を主張し、大衆社会の実態を明らかにした。
4. D.リースマンは、伝統指向型、内部指向型、他人指向型という三つの人間の類型を設定し、大衆社会においては、他人指向型が支配的であると指摘した。
5. W.コーンハウザーは、共同体的社会、多元的社会、全体主義的社会、大衆社会という四つの類型を分析的に抽出した上で、大衆社会は民主主義の基礎となる最も望ましいものであるとした。
解 説
選択肢 1 ですが
G.ル・ボンは、『群衆心理』 が代表作です。群衆を「意識的人格を完全に喪失し、操縦者の暗示のまま行動するような集合体」と定義しました。「合理的な意思決定の手続きに従い、冷静に世論を形成する主体」ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
ル・ボンの群衆に対し、公衆について述べたのがタルドです。タルドは、公衆を「群衆とは異なり、空間的に分散して存在し、コミュニケーションメディアでつながり、各人が独自の判断と意見を有し、世論を形成する主体」と定義しました。「非合理的に情動を噴出させる傾向がある」とはしていません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
ホルクハイマーは、フランクフルト学派の1人です。ナチスの残虐行為などから「道具的理性」を提唱しました。フランクフルト学派は、批判理論による研究を行ったグループです。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
リースマンによる、人間の3類型です。
選択肢 5 ですが
コーンハウザーは、2つの基準(エリートへの接近可能性,非エリートの操縦可能性)を用いて4つの社会類型(共同体的、多元的、全体主義的、大衆)を提示しました。彼は、現代社会を大衆社会と位置づけ、多元的社会を理想としました。「大衆社会を最も望ましい」としたわけではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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