問 題
社会経済理論に関する記述として最も妥当なのはどれか。
1.A.スミスは,『国富論』において,自由主義を説いた古典派経済学を批判し,政府が財政・金融政策等の手段を用いて総需要管理を行うことによって,資本主義の危機を乗り越えることができると主張した。
2.K.マルクスは,『経済学批判』の序言において,唯物史観に基づき,生産諸関係の総体から成る社会の経済的構造を「土台」(下部構造)と呼び,それに規定されて,一つの法的・政治的な上部構造が形成されるとした。
3.M.ヴェーバーは,『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』において,プロテスタンティズムの享楽的な生活態度は,特にルター派において典型的な形で現れており,それが近代資本主義の精神の形成に影響を与えたとした。
4.W.ロストウは,『経済成長の諸段階』において,近代産業社会の誕生を経済成長の三段階によって説明し,社会主義体制の社会を除いては,第一段階の伝統社会に続き,第二段階の工業社会を経て,最終段階で脱工業社会に至るとする段階発展説を唱えた。
5.J.ボードリヤールは,『消費社会の神話と構造』において,顕示的消費という概念を生み出すとともに,現代社会を「消費社会」という角度から分析し,人々の消費の営みを,モノのデザインやイメージよりもモノの機能や効用に向けられた行為として捉えた。
解 説
選択肢 1 ですが
A.スミスは「国富論」において、「重商主義」、すなわち外国貿易を盛んにして国富を増そうとする経済政策を批判し、自由主義を提唱しました。すなわち、国家の統制や介入を排除し、市場原理に任せるべきであると主張しました。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
K.マルクスについての記述です。唯物史観がキーワードです。
選択肢 3 ですが
M.ヴェーバーは「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」において、相反するように見える「禁欲的信仰」と「資本主義的営利活動」が、相互に親和関係にあると考えるべきではないかという主張をしました。「宗教的に運命的に救われる人が決まっているという状況→自分がもし救われる人なら、いい人として働き、その結果としてお金はいっぱい入ってくる→みんながんばって働いてお金を稼ぐので、資本主義社会発達」という流れです。「享楽的生活態度が・・・近代資本主義の精神形成に影響」というわけではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
ロストウの経済発展段階説では、「伝統的社会→離陸のための先行条件期→離陸期→成熟への前進期→高度大衆消費時代」という5段階の経済成長段階説を示しました。「3段階」ではありません。選択肢 4 は誤りです。(H29no54)
選択肢 5 ですが
フランスのボードリヤールの「消費社会の神話と構造」は消費社会論の代表的著書です。「記号」という商品の価値が、本来の使用価値や生産価値以上に効力を持つ社会を「消費社会」と考えました。「・・・モノの機能や効用に向けられた行為として捉えた」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2 です。
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